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4話 死んでるから何?

地獄と呼ばれる洞窟の入口に立った俺たち。

その横でベアトリスが口を開く。


「ザクロは何が好きなんですか?」

「ベアトリス?」


急な質問で意味が分からなくて名前を呼んだんだけど。


「え?!私が好きなんですか?!//////そ、そういう質問じゃなかったんですけど、で、でも私も好きですよ!ザクロのこと!結婚しましょう!ここでして下さい!誓いのキスを!」


何を言ってるんだこいつは。

目を閉じて待っているらしいベアトリス。


そういう意味で言ったんじゃないんだけど。


「今一応洞窟の入口にいるからもう少し空気を読んでくれないか?」

「わっ!す、すみません」


自分が何をしているのか気付いたらしい。


「この洞窟の奥で罪人が繋がれているらしい。アサシンのアヤメと言うらしいけど。生きた時代はベアトリスの産まれる前」


俺はこの洞窟の前で土に手を触れて情報を読み取ってみることにした。


【名前】アヤメ

【職業】アサシン


当然、既に死んでいる。

俺の能力で読み取れる場合既に本人が死んでいる場合だ。


「ギリギリ能力の使用範囲内だな」

「どうするんですか?」

「俺たちから行くのも面倒だ。向こうから出てきてもらおう」


俺はアヤメを蘇生する。

30分経過した。


「出てきませんね」

「そうだな。そんなに時間がかかると思えないが」


更に1時間が経過した。


「何をしているあいつ」

「この洞窟壊しましょうか」


そう言ってベアトリスが剣を抜いた。

山を吹き飛ばしたこいつだ。冗談ではないのだろう。


「崩れる間に出てきて貰いましょう」


そう言ってベアトリスが剣を振る。

ドドドドドトドドドドド。

洞窟が崩れていく。


相変わらずとんでもない力だ。


「この程度逃げきれないようならザクロの仲間になる価値はありませんよ」


サラッととんでもないことを言ったな。

俺もこの程度で死ぬとは思わないけど。


何故ならアヤメの二つ名は絶対回避。

素早さに全振りした人物らしいし。


今洞窟の入口がしまった。

大丈夫か?あいつ?なんてことを思っていたら


ザン!

入口を塞いでいた岩の塊が真っ二つに割れて道ができる。

そこから現れたアヤメ。

黒髪の少女。


際どい格好をしていた。

胸と腰に薄い布を付けているだけ。


「はぁ……いきなり崩れたと思ったらお前らのせいか。バイバイ私といてもいいことないよ」


そう言ってから俺から離れようとするアヤメ。

マイペースだなこいつ。


だが、その体はピタッと止まる。


「な、何故動かない」

「強制服従システムだ。お前は俺に逆らえない」

「はぁ。じゃいいや」


俺の近くに戻ってくるアヤメ。

そんな彼女に事情を説明した。


「という訳でこれからは仲間だ」

「仲間?奴隷の間違いじゃなくて?」


鼻で笑われた。

ベアトリスが特別なだけで普通はこういう反応をするだろうな。

しかし俺の知っているアヤメの人物像からかけ離れてる気はするけど。

アサシンだけど人当たりはいいという話は聞いたことがある。


「まぁいいよ。好きにしなよ。どうせ逆らえないんでしょ」


そう言って座り込む。

骨が折れそうだなこれ。


「死んでたところ生き返らせて悪いとは思ってるよ」

「まったくだね。人の迷惑を考えて欲しいね」


そう口にするアヤメを見てベアトリスがムッとする。


「そんな言い方ないじゃないですか」

「人生なんて1周でいいよ。迷惑してる」


そんなことを言っているアヤメだが無理やり連れ帰ることにする。


「か、勝手に手を取らないで」

「好きにしろって言ったじゃないか。あんまりワガママ言うなら今から記憶消してもっと素直になってもらうけど?」

「分かったよ」


脅しが聞いたのか素直に歩き始める。

大事な記憶でもあるんだろうか。

まぁ興味は無いけど。

その前にアイテムポーチを漁るが


「丁度いいサイズがないな」

「何の話?」

「アヤメに渡す服を何着か見繕っていたんだがサイズがちょっとブカブカかな」

「悪かったわね。胸がぺったんこで!どうせ私はツルツルのまな板だから!」


怒鳴ってくるアヤメだが


「別に胸の話はしてないだろ。普通に身長が思ってたより低かったから」

「う、うぐ……」

「気にしてるのか?俺は別に気にしないから。いいと思うよそういう体型」

「う、うるさい……」


俯いてしまうアヤメ。


「ザクロ。勇者パーティの中で私だけが何であそこで死んでたか知ってる?」

「知らないな」


答えるとしゃがみこむアヤメ。


「私は当時仲間を見捨てて1人で逃げ出したのよ。敵前逃亡したから。あんたこんな私を仲間にするって正気なの?」


続けるアヤメ。


「初めに死んだのは聖女。腹をモンスターに食い破られて惨たらしく死んで行った。次に死んだのはタンク、魔王の召喚した悪魔に引きちぎられた。最後に死んだのは勇者。私に逃げろって言いながら魔王に殺されて死んだ」


あの、何でそんなに急に暗い話するんですか?

そう思うけどとりあえず聞くことにする。


「私は逃げた。みんな死んでいく中逃げた。追手を振り払って逃げ帰った。私は勇者パーティの中で1番速かった。だから1人で逃げるのなんて訳無かったよ」


続きを促す。


「1人逃げ帰った私は非難された。『仲間を見捨てるなんて悪魔か』って付いたあだ名は裏切り者。それから私は反逆者としてあの場所に繋がれて死んだ」


それでも仲間にするの?聞いてくるアヤメに頷く。


「アヤメは間違ってない」

「えっ?」


キョトンとするアヤメ。

その後に反論してくる。


「わ、私逃げたんだよ?!見殺しにしたんだよ?!」

「アヤメが何か間違ったことをしたように俺には思えないよ。俺でもそうするしそうさせる」


そう言ってから俺はアヤメに聞く。


「そのアヤメの処分について決めたのは誰?今から話しに行こうか」

「話って死んでるよ。私が何百年前の人間だと……」


そこまで言ってから俺の顔を見るアヤメ。


「俺は許すつもりないよ。アヤメをそんなふうに合わせた奴らを。例え既に死んでても」

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