3話 眠ってた力
翌日。
俺は家を出る前にベアトリスと話していた。
「話は聞きましたがザクロはどうして私なんかを蘇生させたのですか?強い冒険者など他にもいたでしょう?」
「俺のスキルは仲間が強いほど強くなる」
「詳しく説明してもらってもいいですか?」
俺はベアを連れてギルドの保有するトレーニングルームに来た。
トレーニングルームとは言え室内ではなく外にあるけど。
魔法の練習なんかをするから周りには殆ど何も無い平原だ。
「ここで何をするのですか?」
「とりあえずベアはあのダミーに攻撃してみてくれ」
ここには攻撃を受けてくれるダミーと呼ばれるものがある。
それに攻撃を放てば受けたダメージの分だけダミーが小さくなる。
そして一定時間経てば元の大きさに戻る。
どういう仕組みかは分からないけど。
「全力でいいんですか?」
「あぁ」
彼女は詠唱を始める。
そして一撃を放つ。
ズドォオォォォォォン!!!!!!!!!
パラパラパラパラ……
彼女の放った攻撃はダミーを消し飛ばした。
それどころか
「え?えぇ?私こんなに力ありましたっけ」
ダミーの奥にあった数十メートル離れた山が無くなった。
使った本人も驚いていたし。
「な、なんですかぁぁぁぁぁ????今の音は!!!!!」
ギルドの職員が駆け寄ってきてこの惨状を見る。
「あ、あれ?あそこ山がありませんでしたか?」
「あ、ありませんでしたよ」
あはははーと誤魔化すベア。
彼女が笑っているとダミーの方は修復を行っていた。
消し飛ばされても修復機能は働くようだ。
その横で俺はベアと同じように詠唱をして剣を振る。
ズドォオォォォォォン!!!!!!!
またダミーが消し飛んだ。
「は、はわわわわわ……な、なんでしゅかこれぇ……ダミーが消し飛んでるとこなんて見たことありませんよぉ〜」
職員がその場で倒れた。
ベアが目を見開く。
彼女の驚愕の顔を見るのはこれが初めてか。
蘇生した時もさほど驚いてなかったけど。
「な、何故ザクロが……勇者専用の詠唱を?真似してもこんな威力にはなりませんよ……射程は出ていないようですが威力は……」
「これが俺のスキル。死者の王」
今までは仲間が弱かったから使えなかった力だ。
「自分の使い魔の能力を使用出来るし使い魔は俺との絆によって基礎能力が底上げされる」
「ははは……面白いですねザクロは。そんな人初めて見ましたよ」
俺が使うときは色々と制限付きではあるけど。
今のもベアのようには使えてないはずだ。
俺はしょせんネクロマンサーなのだから。
「仲間が強ければ俺はどんどん強くなれる。だから俺はベアを蘇生させたしこれからも強いメンバーを蘇生させるつもりだ」
俺を見つめるベア。
「妥協するつもりはない。俺は世界最強、いや歴代最強のパーティを作り上げる」
「大きく出ましたね。ですがそれでこそ我が王に相応しい。このベアトリス地獄の果てでもお供いたしますよ」
そう言った彼女によろしくと伝えて俺はある場所に向かうことにした。
「今日はこれからどうするつもりなんですか?」
「さっそく地獄へ向かう」
そう言うと
「へっ?じ、地獄あるんですか?」
「あるという話は聞いているよ」
そう答えて俺はベアを連れて南の方に向かうことにした。
そこに向かう道中、ベアが口を開いた。
「皆あの後どうなったんでしょうか。私が魔王に負けた後」
皆というのは彼女の所属した勇者パーティの他のメンバーの事だろう。
「さぁ?ただ魔王はまだ生きてるという話は聞いたよ」
彼女はグッと聖剣を握りしめる。
「こんな聖剣抜かなければよかった。だから死んでしまった」
ポツリと漏らした彼女。
「本当は嫌でしたよみんな期待して私はそんなに強くないのに」
勇者様の本当の顔なのかなこれは。
「呪われた剣ですよこれは。抜いてしまった者に世界を押し付ける」
そう言ってからえいっ!
彼女は聖剣を投げ捨てる。
「ばーかばーか!勇者なんてやめてや……ごふっ!」
ゴン!!!
ベアの額に聖剣が飛んできた。
「もうやだぁぁぁぁあぁあ!!!!!」
泣き始めるベア。
たしかに呪いだなこれは。
そう思うしかないようだ。
「まぁ、安心しなよ。そんなもの持ってても別に魔王退治なんてさせるつもりないし」
何より俺も面倒だからそんな依頼受けたくないし。
「ほ、本当ですか?ザクロは優しいですぅ!」
ぎゅーっ。
また抱きついてくる。
「もう死ぬのは嫌なんです。暗くて寒くて寂しい」
「大丈夫」
そう答えてやる。
「約束ですから」
ところで、と続けるベア。
「あ、あの私してみたいことがあったんですよ。ほら私訓練に忙しくて出来ないこと沢山あったんです」
「何?」
俺が聞くとベアがカァァァっと顔を真っ赤にしてそれでも口を開いた。
「わ、私とデートしてくれませんか?!//////ザクロとしてみたいんです」
「丁度いいじゃないか。このちょっとした旅をデートにしようか」
雰囲気がどーのこーの言わないかな?とか思ったけど
「いいですねそれ!」
特に文句はなかったらしい