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2話 歴代最強の勇者が仲間になりました

俺は使い魔に裏切られたショックで英雄の墓地に来ていた。

かつて魔王と戦って命を落とした英雄達がここに眠るとかなんとか。


その墓の横には聖剣が突き刺さっている。

伝承によると勇者がここに眠ったあといつの間にか刺さっていた、ということらしいが。


「抜けねぇよなぁ?ゴクリ。ふんがー」


俺は聖剣に手を伸ばすがビクともしない。

ダメだこりゃ。

俺に勇者の資格は無いらしい。

そりゃそうか。ここで簡単に引っこ抜けて無双出来たら誰も苦労しないし努力もしない。


「こんな力本当はもう使うつもりなかったんだけどな」


俺はかつての英雄の前で膝を着いた。


「呼び起こしてすまないと思ってる。でも、力を貸してくれ。こんなところで終われないんだ」


俺は土の中に眠るその人に意識を向けた。



【名前】ベアトリス

【ジョブ】勇者



【使い魔にしますか?】


俺はその問いに答える。


「目を覚ませ」


ボゴっ!

土の中から骨が突き出る。


やがてそれは1部だけじゃなく全身をその土の中から出す。

そして骨の内から湧き出すように内蔵が形成されていきやがてそれらも肉に包まれる。

しばらく待っていると俺の前に


「お、女……?」


てっきり勇者だというから男だと思っていたのだけど目の前に全裸の女が出来上がる。


「な、何を見ているのですか?!//////」


女は俺に見られていることを瞬時に理解して体を抱き抱えるようにしゃがみこんだ。


「わ、悪い!男だと思ってたんだ!」


だから何も考えずに蘇生させてしまった。

がこのままじゃ何も説明できない。


パサっ。

立ち上がった俺はしゃがんだ彼女の肩にボロいローブを着せる。


「すまない。こんなものしかないんだ」


その薄汚い布切れをぎゅっと掴むベアトリス。


「な、何故生きてるんですか?私は」

「死んだところまた呼び戻して悪かったよ」


これまでのことを説明する。


「えぇぇぇぇぇぇぇ?!!!ネクロマンサー?!!!!!ほ、骨からここまで蘇生させたんですか?!普通ネクロマンサーに出来るのってそこらの死体をちょっと動かすだけですよね?!それにこんなふうに喋れるようになりませんよぉ?!」


叫ぶベアトリス。

その後もありえない!とか見たことない!とか信じられない!とか繰り返した後にベアトリスは俺を見て口を開いた。


「分かりました。このベアトリスこれからはあなたの剣になりましょう。あなたならば私の全てを捧げられます」


そう言うと彼女は自身の墓の横に突き立てられた聖剣に手を伸ばす。


「それは何百年も抜けないってずっと言われて……」


俺の言葉を聞く前に彼女はあっさりと引き抜いた。

まるで聖剣が手に取るのを許可したように。


今まで何をしても抜けなかったし土も掘り起こせなかったのに。あっさりと抜いた。


「ん?なんです?」

「いや、何でもない」


間違いない。

こいつ勇者だ。

勇者ベアトリス。

ヨシヤ達とは違う本物の英雄。


そうして俺の前で片膝を着く。

この子には俺に絶対服従するように深く刻んである。

でもこれは……その効果じゃない。


絶対服従の効果は嫌でも体がそうさせるだけのもの、例えば俺には逆らえないとか攻撃できない、とか。

こいつは自分の意思で膝を着いた。


「このベアトリス、第2の人生を貴方様の為に使います我らが王よ。どんな障害も私が取り除きましょう」


俺は究極のカードを手に入れることに成功してしまった。

では先ずファーストキスから捧げましょうとかとんでもないことを言い出すベアトリス。

大丈夫か?この勇者は。



俺はその後ベアトリスを連れて街を歩くことにした。

聖剣は見られると面倒なので装備はさせていない。


「しかし凄いですね。普通骨から蘇生なんて出来ませんよ。化け物ですか?あなたは」


俺の横を歩くベアトリスがそう話しかけてきた。


「あ、私のことはベアとかベア子とかって読んでくださって構いませんよ。親しい人は皆そう呼んでいましたから」


ニコニコして笑顔を向けてくる彼女。

誰かの笑顔を見るのは久しぶりな気がするな。


「ならベアって呼ぶよ」


そうやって歩いていると向こうから男が歩いてきた。

大柄の柄の悪そうな男だ。

極力目を合わさないよう通り過ぎようとしたら


「おい、女」


俺の横にいたベアに目をやる。


「はい、何でしょう?」

「なんてスケベなかっこしてやがんだお前。誘ってんのかよ」


そう言って指を動かしながらベアに触れようとしている。

俺は間に入った。


「やめておけよ。痛い目見るぞ」

「はっはっは。え?お前が痛い目見せてくれんのかよ?」


そう言って俺をぶん殴って来ようとする男。


「死ねぇぇぇぇ!!!!!」

「死ぬのはあなたでしょう?」


ベアが俺の肩を飛び越える。

羽が生えてるかのような動きで、ドカッ!!!!!!!


男を蹴り飛ばす。

吹っ飛んで行った男は頭から壁に激突していた。


それどころか顔面が壁に埋まってる。

そのまま気絶したようだ。


「我が王に触れることは許しませんよ」


振り抜いた足をスっと戻して着地するベア。


「ザクロ。怪我はありませんか?」


俺の体のあちこちをベタベタ触って確認を取ってくるベア。

そこは触っちゃダメだよってとこまで触ってくる。


「良かった。お守りできたようですね」


そう言ってくれるベア。

俺は恐る恐る吹っ飛ばされた男の方を見た。


女の子の脚力じゃない。

死んでないよな?


とにかくベアにこの格好をいつまでさせる訳にも行かないしさっさと服屋に行こう。

数十分後。

俺の横には女の子らしい姿をしたベアの姿があった。


「最近の洋服は可愛いですね。私には似合わないと思いますけど」

「いや、可愛いよ」


俺は知らずそう漏らしていた。

するとベアは顔を赤くする。


「え?か、可愛い、ですか?私が?//////」

「え、うん。俺はそう思うけど」

「嬉しいです!」


ぎゅーっと抱きついてくる。

さっきの脚力はどこいったのか女の子らしい優しいフワッとした力加減だった。


「あ、あれ?痛くない」

「ちゃんと加減してますよ」


ぷくーっと頬をふくらませてそう言って離れるベア。

首がへし折れないか不安だったよ。


「仲間にはゴリトリスとかって呼ばれてましたけどそんな呼び方しないでくださいね?それだけは許しませんからね」

「わ、分かったよ」


しかしゴリトリスか。

あのパワーを見たあとじゃ納得出来るな。


そう呼べば命がいくらあっても足りないだろうから呼ばないけど。

そんなこんなで今日は家に帰ることにする。



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