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1話 追放

「ネクロマンサーのザクロ。貴様を追放する」


 俺はパーティリーダーのヨシヤにそう宣言される。


「本当に俺を追放するつもりか?」

「あぁ。なぜならお前は無能だからだ。なんだ?ネクロマンサーとは。死者を使役するとは聞いているがお前が能力を使っているところを見たことがないぞ」


 返す言葉は無い。

 確かに俺がこいつの前で能力を使っているところは見せていない。


「俺は極力能力を使わないようにしてる。死んだ仲間やモンスターを動かすなど余り気持ちのいいものでは無いからな」


 そう言ってやると聖女のパールが口を開く。


「無能である事の言い訳はやめてもらえる?」


 こいつは俺の幼なじみだ。

 小さい頃は俺と結婚するとよく言ってくれたのに今ではヨシヤのケツ持ちをしているらしい。


「ねぇ、ちょっと聞いてんのクズ」


 俺を蹴り飛ばすパール。

 ついに幼なじみにまで嫌われたか。


「気持ち悪いのよ。死体を操作するなんて」

「それはそうですね。貴方の能力は道徳というものを知らないようです」


 メガネをかけた聖者のセージがそう責めてくる。


「罪悪感というものがないのですか?死者を死んでなお戦わせるなど。死者はお前の道具では無い。人の心がないのか?すぐにでも冒険者をやめるべきだ」


 俺の事を酷く避難してくる。

 これでもかというくらいに。


 このパーティには俺の味方はいなかった。

 あれだけ一緒に戦ってきて、絆を結んだと思っていた仲間が俺をあっさりと切り捨てようとしていた。

 だけどそれでも俺は


「残らせてくれないか?全部話すよ。俺が今までやってきたことを」

「はぁ?やってきたことだぁ?お前がやってきたのは俺たちの後ろで戦ってるフリだけだろ?」

「確かに俺に戦闘能力はない」


 俺はネクロマンサー。

 死者を使役して戦う趣味の悪いジョブだ。

 直接的な戦闘能力はない。


「認めましたねザクロ。このパーティにお前の居場所はない」


 そう言い切るセージ。


「俺たち仲間じゃなかったのかよ。話くらい聞いてくれてもいいじゃないか」

「仲間?あんたがそう思ってただけでしょうが。気持ち悪い勝手に仲間扱いだなんてあーやだやだ」


 パールがリーダーのヨシヤに抱きつく。


「ねぇ、ヨシヤ!さっさと迷惑料請求して宿に帰ろうよ!」

「そうだな。おいザクロ。迷惑料だよ迷惑料。払えよ」


 俺はアイテムポーチから皮袋を取り出す。

 でも渡す前に最後にもう一度口を開く。


「なぁ、みんな俺を追放するのは構わない。でも話くらいは聞かないか?この話を聞かないときっとみんなは後悔する」


 だがその言葉に好意的な言葉なんて当然のようにない。

 最後にヨシヤが口を開いた。


「とっとと寄越せよ皮袋。はぁ素直に死体と遊んでろよお前は」


 そう口にしたヨシヤは俺から皮袋を引ったくって3人で歩いていってしまった。

 取り残された俺は呟く。


「あいつらの寿命後どれくらいかな。俺抜きだ。直ぐに"腐り始めそう"だけど」


 そうして空を見上げた。

 能力を使ってるところを見たことがない、か。


「俺は君達と組んでから"ずっと能力を維持してきた"のにね」


 死体と遊んでろ、か俺はずっと死体といたんだけどね。

 ふと呟いたその言葉は誰の耳にも入らない。

 風に乗って消えるだけだった。


「失敗だったか。あいつらに自由を与えたのは。残念だ」


 やはり死体に自由など与えるべきではないようだ。

 次はもっとうまくやろう。



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