噛み合わぬ
ロックウッド軍の将校達と、マティアス軍の将校達も明日に向けて軍議を続けていた。だが、その足並みがそろっているかと言われると疑問符が浮かぶ。
ロックウッド軍の代表は勿論ハイルとレナードである。マティアス軍の団長テンドロンは、ハイルとレナードに今後について話す。
「三軍に分けて攻める?」
「ああ。中央はやはり警戒されている。大きな仕込みがあるかもしれん。現にそちらも敵が中央で仕込んでいた策にかかり別動隊を失っただろう」
レナードの言葉に、テンドロンは少しだけ不快そうな顔をする。昨日の策はロックウッド軍が提案した策だったのだ。自分が汚れ役を買って出る、と堂々と言ったロックウッド家だが、結果だけ見るとマティアス軍が大きな損害を受けた。
なのに、こちらの落ち度で兵を失ったみたいに言われてはたまらない。そしてテンドロンはもう一つ気になることがあった。
最近末端の兵に流れる、ロックウッド軍と帝国軍の内通である。所詮噂だと思って笑い飛ばしたが、こちらの犠牲が多いのは事実である。
「ではうちは左のルートと中央の一部を担当します」
テンドロンは自分の疑いに蓋をすると、ロックウッド家に提案する。
「いいだろう。うちが右と中央の両方を受け持とう。我が軍の強さを貴方達にお見せしよう。中央でそちらの出番はないかもしれんがね」
ハイルがテンドロンに言い放つ。まだ若いが、『剣聖』を持っているためか大変横柄な態度なのが気になった。
「左右のルートは鉱山だけあって穴が多い。敵が潜んでいないか気をつけましょう。それに巨大岩を落とす策を考えたのは誰なのでしょうか。ドルトンはそういう策を使うタイプではないのですが」
テンドロンの忠告はハイルにはあまり届いていなかった。ロックウッド軍自体にあまり犠牲が無かったためかハイルは既に勝ち戦だと信じて疑わなかった。
「帝国騎士団に少し小賢しいのが居たんだろう。巨大岩など食らわん。あの馬鹿のいる帝国軍を痛めつけて後悔させてやる。既にあの砦で死んでいるかもしれんがな」
ハイルはシビルがここに来ていることに気付いていなかった。ただ奪う予定のミスリルのことを考えていた。
翌日、俺は日が昇る前に起きるとメーティスに尋ねる。
『今日はこちらが勝つ?』
『イエス』
どうやら今日はいけるようだ。俺は刻一刻と変わる状況に対応するため本陣の天幕に待機することになった。ダイヤとシャロンは俺が臨機応変に対応するためにも傍に居て貰っている。
「ここに居たら戦えなさそうだな」
とシャロンがぼやく。
「なに、きっと出番は必ず来る。そのためにも今はゆっくりしといてくれ」
本陣は二百しか居ない。人数が少ないため殆どが出払っているのだ。
「さあ、まずはマティアス騎兵とうちの弓兵だ。どうなるかな」
俺は指揮官達が上手くやるように天幕から祈ることしかできなかった。
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