なんで僕だけ
随分間が空いてしまってすみません。ようやく体調が戻りましたので、投稿再開します!
時間が経ったからもう忘れたよ、という方のために簡単に前回までのあらすじを。あとがきにお知らせもあるよ。
戦闘系スキルじゃないシビルは、家から追放されローデル帝国へやってきた。帝国で軍に入りなんとかやっていると、お世話になったイヴが、このままでは殺されるという情報を知ってしまう。
それを聞いたシビルはイヴが戦っている戦場に向かう。
敵はかつて自分を追放したロックウッド家だった。戦場に向かうも上官ドルトンからの信用を得られず、放置されてしまう。
シビルは帝国軍がピンチになることを予測し、奇策を用いて味方の軍のピンチを救う。そこで初めてシビルはドルトンの信頼を勝ち取った。古巣であるロックウッド軍に果たして勝つことはできるのか。
翌日。シャロンは朝の鍛錬中に、シビルがイヴの元へ向かう所を目撃する。
「あの馬鹿はまた女のところか? ここに何しに来たんだ、あいつは。私はあんな馬鹿のためにこんなところまで……選択を間違えたか」
シャロンが苛々しているのを察したダイヤはこっそりとその場から逃げ出そうとする。
「おい、お前も魔法使いとはいえ兵士だ。たまには稽古をつけてやろう」
それを聞いたダイヤは嫌そうな顔をして振り向く。
「いや、遠慮しま――」
「遠慮するな。日々の鍛錬は必要だろう」
(恨むよ、シビル。せめてもっと隠れて行ってくれないかな)
ダイヤは怒りの矛先をシビルに向けると覚悟を決める。
だが、シャロンの稽古はダイヤの想像以上の厳しい稽古であった。
「ちょ、いつもより強くない? ねえ、危ないって。聞いてる? 死ぬから、シャロンが本気出したら本当に死ぬから!」
ダイヤは大声で叫ぶ。
(くそー、なんで僕だけ! シビルに稽古したらいいのに!)
ダイヤは恨み言を思うも、口には出さない。それは賢明な判断だったと言えるだろう。その後もダイヤが動けなくなるまで厳しい稽古が繰り広げられた。
最後にはダイヤは言葉も発さずに地面に倒れ込んでいた。
「ダイヤ、なぜお前もついてきたんだ? あの推薦でもしかしたら帝国騎士団に入れたかもしれないのに」
シャロンは近くの木の根に座りながら尋ねる。
「僕はずっと自分は落ちこぼれだと思っていた。けどシビルはそんな僕をいつか大魔法使いになると言ってくれたんだ。冗談だと思ったよ。だけどシビルの顔は真剣だったなあ。それから彼の元で戦い、僕も役に立てるんだと知って嬉しかった。僕に、僕の価値を教えてくれたシビルを助けてあげたいんだ。シビルはきっと僕の想像を超えるような大物になると思うんだ」
ダイヤは笑って言う。
「それは期待しすぎだ。だが、シビルの言うことは当たる。本当に凄い魔法使いになるのかもしれんな」
「そうだといいね。君こそなぜここに来たんだ? あの戦いで十分に汚名返上できただろう」
「なに。今更帝国騎士団になどさして未練はない。私は本物の騎士になりたいし、会いたいんだ。私は騎士とは高潔で誇り高い者だと、領民たちも全て救う英雄だと今でも信じている。その夢を信じたいからここにいるんだ」
それを聞いたダイヤは微笑む。
「なるほど、君らしい。けど、それは……君もシビルに随分期待してるみたいだね」
「ふん。私がついて行くのだ。それくらいはして貰わないと困る」
「もう、素直じゃないね、君は」
シビルを支える若者二人は穏やかに隊長について話していた。
お読みいただき、ありがとうございました!
遂に、拙作
『不敗の雑魚将軍~ハズレスキルだと実家を追放されましたが、「神解」スキルを使って、帝国で成り上がります。全く戦えない臆病者なのに、勘違いされ気づけば帝国最強の大将軍として語られてました』
の書籍化&コミカライズが決定いたしました!
これも全て本作をお読みいただき、応援して下さった読者様のお陰です!
話は四月から来ていたのですが、体調のせいもあり報告が遅れました。詳細はまた後日発表できればと思っておりますが、今後ともよろしくお願いします!
本日は後、二話更新します。





