逆転の一手
俺が指差した先はマティアス軍の別動隊である。皆を速く救わなければ。
ダイヤは地面に手をあてる。ダイヤは巨大な岩が置かれている平な地面を斜めに変形させた。それによりバランスを崩した巨大岩はどうなるのか。もちろん転がり落ちる。
急斜面となった大きな絶壁に置かれていた巨大岩は凄まじい勢いで転がり、マティアス軍の別動隊に襲い掛かった。
「うわああああ!」
マティアス軍はその直径二十メートルを優に超える巨大岩の落下に叫び声をあげ、そのまま叩き潰された。
完全に勝ちを確信していたマティアス軍はその巨大岩の襲撃に混乱する。半分以上が今の岩で戦闘不能になっただろう。
「ローデル帝国軍の戦士達よ! マティアスの別動隊は半分以上を今の大岩で失った! 活路は後ろだ!」
ダイヤが叫ぶ。
帝国軍は馬鹿ではない。この窮地の突破するのはこのタイミングしかないことに気付いていた。
「後ろを攻めろ! 奴等も混乱している!」
後ろを指揮している指揮官の命令と共に、後方の別動隊に襲い掛かる。
「私は別動隊の指揮官を狙う。援護は任せた」
シャロンはそう言うと共に、急斜面を走り降りる。その先には他より立派な甲冑を身に纏っている別動隊の指揮官を狙う。
「男らしいねえ。ダイヤ、このままじゃ届かない。少し先を伸ばしてやってくれ」
「はーい」
ダイヤが手を地面にあてると、急斜面の先端を宙に伸ばす。シャロンはそのまま凄まじい速度で跳びあがると、指揮官目掛けて襲い掛かる。
「舐めるな! 串刺しにしてやれ!」
混乱の中でも、上官を守ろうと周囲の騎士が槍を構える。
「うちの勇敢な姫様を援護しないとな」
俺は弓を構えると、魔力で矢を二本生みだし番える。そして、周囲の騎士の頭部を撃ち抜いた。
「良い援護だ、シビル!」
そのままシャロンはその大剣で指揮官を叩き斬った。
「隊長ーー!」
指揮官を失った兵士が叫ぶ。
「指揮官は討ち取った! 後は、烏合の衆だ! 殲滅しろ!」
シャロンの言葉に呼応するように残った別動隊を仕留めるために帝国軍が襲い掛かる。混乱した別動隊はそのまま散り散りに逃げ去った。
「背後は仕留めた! 憂いはない。このまま戦え!」
挟撃状態をなんとか終わらせた帝国軍はそのまま前方と戦い始める。敵の連合軍も別動隊の敗北に動揺したのか勢いを失い、そのままその日の戦いは終結を迎えた。
「なんとか全滅は防いだな」
俺は残った帝国軍を見て呟く。
「けど……結構やられちゃったね」
ダイヤの言葉に頷く。千人程やられた。こちらの大岩での襲撃を入れれば相手の損害も千人程だろう。
「厳しいな。けど分かった。なぜ俺が戦うのか……」
俺はなぜ戦いが好きでもないのに戦っていたのか。
「だが、ここからひっくり返す。そう言えば、イヴの姿が上から見えたな。久しぶりに挨拶に行こうかな。ここ数日は忙しくて挨拶も出来ていなかった」
俺は絶壁を降りると、美しい髪を靡かせていたイヴの元へ向かう。
「イヴ!」
俺の声を聞き、振り返るイヴ。前に会った時と変わらない可愛らしい笑顔を向けてくれる。
「シビル! どうしてここに!? もしかしてあの岩を落としたのって……」
「俺。イヴに会いにここまでやってきたよ」
こうして俺とイヴは数か月ぶりに再会することができた。
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