略奪
シビル達はメルカッツに向かっている時、ロックウッド軍も戦地に向かって行進を続けていた。
その動きは統率が取れており、武により名をはせたことが遠目からも分かる見事な行進であった。
その様子を見たローデル帝国の村人達は恐怖に駆られたのも仕方ないだろう。
ある騎士が、ハイルの元へ向かう。
「ハイル様、食料調達の許可を頂きたくて参りました」
そう言って、騎士は農村に目を向ける。つまり強奪の許可を求めているのだ。
今回のロックウッド軍を指揮するのは次期当主であるハイルであり、父であるレナードは隣で補佐を務めるつもりであった。
ハイルがレナードをちらりと見ると、レナードは無言で頷く。
「良かろう。ここは戦地だ。奪い取って来い!」
それを聞いた騎士達が馬を駆り村へ向かって走り出す。村に騎士団に立ち向かう戦力などあるはずも無く一瞬で占拠された。
兵士である一人が、老人を連れてハイルの元へやってきた。
「この村の村長のようです。ハイル様とお話ししたいと」
ハイルは嫌な顔をするも、一応応じることに決める。
「なんだ?」
「この度は食料は全てお渡します。なので村人たちはどうか助けていただけないでしょうか?
」
それを聞いてもハイルは特に思うことは無かった。どうでも良かったからだ。だが、そこに割り込む十五程の少年が居た。
「ふざけんな! 食料全部なんて渡したら俺達が死んじまう! そんな渡せるものか! 侵略者め!」
少年は叫ぶ。言っていること自体は正しかった。だが、正しいことを通すには力が圧倒的に足りなかった。
「馬鹿! お前何を言っているんだ! す、すみません。すぐに黙らせますので!」
村長が慌てて止めるも既に遅い。ハイルは鋭い目で少年を睨みつける。それを見た少年が体を強張らせる。
「ガキが……! だから農民は嫌いなんだよ。弱ければ、知能も無い。だから早死にする」
そう呟くと同時にハイルは少年まで一瞬で距離を詰めると、一閃。
次の瞬間には少年の首が宙を舞っていた。ごとりと落ちた首を見た村長が腰を抜かす。
「あ……ああ……」
ハイルはゴミを見るような目で首を見つめると大声で言い放つ。
「お前ら、農民共は皆殺しにして村ごと焼き払え!」
兵士達は驚くも、上官の命令は絶対である。村を滅ぼすため動き始めた。
「ハイル……やりすぎだ」
レナードが呆れたように苦言を呈する。
「だが、ここを焼くことで結果的に帝国の力を削ぐことにも繋がります。それに、農民如きに騎士が舐められる訳にはいきません」
その目を見て、レナードは諦めたようだ。
「まあいい。食料は残すのだぞ」
「はい」
ハイルは部下に命令して食料を調達させる。
「やはり敵地での食料は略奪に限るな。兵站も大事だが、無限に持ち込めるわけではない」
ロックウッド軍は途中途中の村で蹂躙しながら目的地に向かっていった。軍の通った後は食料も人も何も残らなかった。
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