傭兵説
「ヨ、ヨルバ様!?」
「本当ですか!」
俺はその希望の言葉に喰いつく。
「だが、一つまだあんたの知らないことがある。あんたの元親族であるロックウッド家が今回の戦争に参戦する。ほぼ確定情報だ。戦うって事は、家族に剣を向けるってことだ。あんたにそれができるかい?」
ヨルバさんが真面目な顔で尋ねる。室内に緊張感が流れる。だが、答えは既に決まっていた。
「勿論。軍のご命令であれば、元家族であれど我が敵に違いありません。殲滅してご覧に見せます」
俺の言葉を聞いてヨルバは何か思うところのあるような顔をした。だが、最後には仄かに笑う。
「そうかい。また推薦状を書いてやる。役に立ってきな」
「はっ! 必ずや帝国軍の武威をアルテミアに示して参ります!」
俺は跪いて頭を下げる。ヨルバはダイヤとシャロンを見る。
「あんた達二人も活躍したみたいだね。騎士爵は無理だが、帝国騎士団に推薦くらいはしてやれると思うよ。次の試験には間に合うだろうさ」
帝国騎士団は、帝国軍の中でも精鋭のみ入団が許される皇帝直属の騎士団である。多くが騎士爵以上を持っていることでも有名らしい。
軍の中でも成果を残した者が試験を受け入隊する。エリートコースといえるだろう。第一から第五師団まであり、特に第一師団『白獅子団』団長は帝国一の剣士と言われている。
きっと化物なんだろうなあ、とぼんやり考える。
それにしても、良かったなあダイヤ。もし帝国騎士団に入れたら昔馬鹿にした奴等皆を見返せるはずだ。
シャロンは出世欲とかあまりなさそうだけどどうするんだろう?
「いえ、僕も望みが叶うならシビル君について行きたいと考えております」
ダイヤが堂々と言い放つ。
おいおい、こっち多分出世コースじゃねえぞ!? 血迷うな、ダイヤ!
「そうかい。そっちの子は?」
ヨルバさんはシャロンの方を見据える。
「私は別に騎士団にさほど興味はありません……だから、メルカッツへ」
シャロンは多くは語らなかった。
「ヨルバ様、この二人を連れて行っても構いませんか。大切な仲間なんです」
「後二人くらい構わないよ。メルカッツはラーゼ領だ。ラーゼ軍が今回の戦争を仕切っているはず。ラーゼ軍の坊やに推薦状は書いてやるよ。まあ、効果があるかは分からないけどねえ。私に恥かかせるんじゃないよ、シビル。私が推薦するんだ、必ず第一功をとりな」
と圧をかけてくる。この人俺を何だと思ってるの? それは無理でしょ?
「はっ。必ずやヨルバ様の名に恥じぬ戦いをさせていただきます」
「良い返事だ。行ってきな。そして最後に……良い仲間だ。大事にしなね」
最後は軍人としての顔では無く、穏やかな御婆ちゃんのような顔で言う。あの顔が本当のヨルバの顔なのかもな、と思うくらい自然な笑顔だった。
俺達は用意を済ませるとすぐさまメルカッツに向け旅立った。
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