俺をメルカッツに連れてって
砦を出て二日、俺が昔面接した駐屯地に再び辿り着く。
「では今報告してくるので、しばらくはここで待っていてくれ」
急使としてやってきていた兵士が駐屯地に入っていた。その後すぐに報告の場が設けられたが、そこに居たのはあの時面接をした三人である。小さい応接間に俺達三人と、元面接官三人が向かい合って座っている。
やっぱり面接って偉い人がしてるんだね。
俺の恩人もとい、天才軍師とかいう謎の嘘をついたヨルバさんも居る。横の禿げたおっさんも相変わらず怖い。
「少し報告は聞いたけど、もう一度聞かせてくれるかい?」
ヨルバさんの提案を聞き、俺はスタンピードの経緯を説明する。それを聞いた三人は驚いた顔を隠さなかった。
「正直、あのゴミ溜めと言われていたガルーラン砦が千のスタンピードを死亡者十人程度で抑えられるとはにわかには信じがたいですね」
二十代後半の青年が息を呑む。
「昔はゴミ溜めだったかもしれませんですが、今はガルーラン砦は難攻不落の砦となりました。大量の魔物の死体も急使に確認して頂いております。ハイオーガの首もこちらに」
そう言って、首を見せる。
「なに、嘘とは思ってはいないさ。三か所同時のスタンピードだ。ハルカが糸を引いているのは分かってる。やるじゃないか、シビル。ここまで成果を残すとは思ってなかったよ」
あんたのお陰で大変だったよ、とは言えない雰囲気である。なんせ恩恵もあったからな。軍師がこんなに過酷だったなんて。しかもこれから俺は更に過酷な所を自ら志願することになる。
迷走を感じざるを得ない。
「ありがとうございます。ヨルバ様の期待にお応えできて光栄です」
「あんたの成果なら、帝国騎士団に入ることも可能だよ。もしかしたら、騎士爵の叙勲も貰えるかもしれない」
ヨルバさんがにやりとした笑みでこちらを見ている。だが、答えは既に決まっている。
「もし褒美を頂けるのであれば、帝国騎士団の入団資格も騎士爵も必要ありません。代わりに、私もどうかメルカッツへ赴任させていただけないでしょうか!」
俺は今回の成果を使い、直談判すると決めていた。
「君、更なる成果が欲しいのかもしれないがあまり焦らない方がいい。あちらは人数も多いし今までように上手くいくとは限らないよ?」
青年が優しく指摘をしてきた。
「いや、違うね。こいつは成果が欲しくて行くんじゃない? イヴだったかね? メルカッツに行った子が心配なんだろう?」
ヨルバさんが口の端を上げて笑う。
くそっ、ばれてやがる。こんな個人的事情で異動させてもらえるのか?
『正直に答えるべき?』
『イエス』
やっぱそうか。この婆さんなんでも知ってるもんな。
「はい。私情が少しはいっていることは申し訳なく思っています。ですがあちらでは罪のない民の血も流れていると聞きます。決して見過ごせるものではありません。少しでもお役に立てればと思っております」
それを聞いた青年とおっさんはなんとも言えない顔をする。
「君、確かに君は活躍したが一兵士が人事に口を出すのは良く――」
「別に構わないよ、とばしても」
青年の言葉を遮り、ヨルバさんが言う。
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