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動き出す各国

 シビルを含めた兵士達、誰一人気付いていなかったが森の中で砦の戦闘を鋭い目で覗いている男が居た。

 その立ち振る舞いは明らかに一般人ではない。無駄のない洗練された軍人の動きである。


「おいおい、マジかよ……。あんな寄せ集めでスタンピードを収めちまったよ。帝国にここまで優秀な軍師がいるとは。未来を見通していたかのような対策。完璧な配置。どれだけ深い軍略が練られていたんだ。こんな傑物がなぜゴミ溜めと言われる砦に? 誤算だったな。まさか失敗するとは。まあいいや。シビルね、覚えたぜ。あいつはきっと脅威になる」


 その男はクラインと同じローデル帝国の西に位置するハルカ共和国の者だった。だが、クラインはその情報は全く知らなかった。同じハルカ共和国であっても陣営が違えば全く情報は共有されていないのだ。


「それにしても、ゲルニカの角笛を使ってあんな砦一つ落とせなかったのは責任問題になるかもしれねえなあ。あーだる」


 男は頭を掻きながらも、祖国に戻るため踵を返した。こうしてシビルの情報が国を超えることになる。




 





 シビルの故郷であるアルテミア王国ロックウッド領では至るところで火の手が上がっていた。ロックウッド家の屋敷付近では大量の農民の死体と、少しのロックウッド家の騎士の死体が転がっている。

 もはやこれは完全に反乱といえる規模にまで膨らんでいた。子供の泣き声が町に悲しく響き渡っている。


 ロックウッド領の農民達が遂に武器を取り、館を襲った。だが、悲しくも脳筋ロックウッド家の騎士は豊富な財源により優れた武器を、そして何よりそこら辺の騎士よりも強かったのだ。農民達は返り討ちにあっていた。

 館で働いているメイドはその悲惨な光景に言葉を失っていた。


「あの人達は……ロックウッド領の農民達ですよね? こ、ここまでしなくても……」


それを聞いた家宰のセバスが頷く。


「その通りです。ここまで酷くなってしまうなんて……勝てば勝つほど、農民達が減っていく。これでは勝ちなんてとてもじゃないが言えません。この先にあるのは、人のいない荒地だけです。やはり私は間違った。この首をかけてでも、シビル様の追放を止めるべきだったのだ」


 セバスはハイルが苛立った表情で帰ってきた時、全てを察した。シビルがこのロックウッド領を見限ったことを悟ったのだ。


「シビルさんに帰ってきてもらえれば変わるんでしょうか?」


「いや、もう遅いでしょう……。それに今さらシビル様に迷惑はかけられません」


 セバスは諦めの表情でそう呟いた。


 屋敷の執務室では、シビルの父レナードと、弟ハイルが話し合っている。


「まさか私があの臆病者を探している間にここまで反乱が大きくなっているとはおもいませんでしたよ」


 ハイルは忌々し気に言うと、剣についた血を布で拭う。


「儂もここまで酷くなるとは思っておらんかったわ」


「馬鹿共が……! 誰のお陰で穏やかな生活を送れると思っているんだ! 根絶やしにしますか?」


「ハイル、奴等を殺すのは構わんが、殺しすぎると税が減る。奴等はもう放っておけ。先導していた若造の首は既に獲った」


「ですが、それでは舐められたままです!」


「それに、北のマリガン子爵から応援を頼まれている。相手は帝国だ。援軍を出せば結構な金になる。分かるな?」


 それを聞いたハイルはにやりと笑う。


「戦は儲かります。マリガン、帝国、両方ともから大金をせしめて見せましょう」


「よく言った。我がロックウッド家の武威を示しに行くぞ! 農民の鎮圧は大方終了した。五百程は鎮圧のために残しておけば十分だろう」


 二人は戦意をむき出しにする。だが、彼等はこれによりさらに憎しみが根深くなったことに気付いていなかった。

 こうしてロックウッド家の戦争参入が決まった。

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