西門と北門
魔物達はメーティスの予想通り四方向から攻める予定のようだ。四方向の魔物の数も予想通りである。
西門と東門には各二百五十体近くの魔物が攻め込んだ。ゴブリンや、オーク、ラックボア等様々な魔物が大挙している。だが、西門、東門の兵士達は門の近くまで攻められても慌てず、魔物達を見つめていた。魔物達が一定まで近づいた瞬間、ダイヤが西門を守っている土壁に手をあてる。
「土変形!」
ダイヤの声と共に、前方に巨大な大穴が空き、大量の魔物達が穴に落下していった。事前に大穴を作り、その上をダイヤの作成した土で埋めていたのだ。その固い土を土変形で柔らかくして落下させた。
「ガアアア!」
先ほどまで安定していた地面が突然崩れたことに驚きを隠せない魔物達。そしてすぐさま異変に気付く。地面から謎の異臭を感じ取ったのだ。
「放てえ!」
西門の指揮官の叫びと共に、火矢が地面に落ちた魔物達に放たれる。火矢が魔物達に触れた瞬間、燃え上がる。
「ギャアアアアアアアアアアアア!」
地面の異臭の正体は油である。シビルは予め大量の油を発注しており、それを干し草にしみこませ地面に敷いていた。
瞬く間に魔物達が火だるまになり断末魔が響き渡る。その光景に兵士達も息を呑む。
「おお……」
「お前達、魔物達が動揺している今がチャンスだ! 大きく数を減らせ!」
指揮官の言葉を聞き、穴に落ちていない魔物達に向けて矢を放つ。
「本当にうまくいっちゃったよ。次は東門か……。僕も忙しいね」
ダイヤはそう言いつつ、東門に向かった。その後、すぐに東門でも火の手があがり、魔物の焦げた臭いが周囲に充満することになる。
一番の激戦区と考えられる南門の逆側、北門には二百体程の魔物が大挙していた。その集団をまとめているのはブルーウルフというC級の魔物である。
水魔法を使い、高い知能を持つ狼である。薄い青色の毛を靡かせ、集団で敵を刈る魔物だ。だがそんな魔物にも弱点という物はある。
「お前ら、ブルーウルフが来たぞ! 焚けえ!」
北門の指揮官の大声と共に、兵士達が草を燃やし始める。そしてその煙を風魔法使いの兵士が魔法でブルーウルフに向けて送り込む。
その臭いを嗅いだブルーウルフの挙動がすぐさまおかしくなる。体が震え始め、素早い動きが止まる。
「本当に効くとは……。今だ、主力を狩るぞ!」
兵士達が槍を投擲する。大量の槍がブルーウルフ達に襲い掛かりそのまま絶命させた。
「まだ大量に魔物達が居る! お前らできるだけ下に降りるな! ここは堀がある。上から少しでも数を減らせ。そのために隊長が大量に武器を買ってくれたんだ!」
シビルの購入した武器の多くは矢と槍。こちらの利点はやはり砦であり、砦の壁の上から敵の数を減らす必要があった。
主力を失った北門の魔物達だが、まだ数は多い。しばらくは激戦が続く。
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