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スパイ

 世話役であるクラインは一人で北門付近に居た。北門は壁の先に大きな堀がある。そこに水が溜まっており魔物達が襲ってくることは今までなかったが、なんとその堀の一部が埋められていた。普段は水によりこの道は隠されていたのだ。

 それにより完全に魔物が通る事ができる橋のようになっている。


「これで北門からも魔物達の襲撃が期待できそうだね。橋の先の壁も脆くしておきましょう。これですぐに壁が破壊できるでしょう」


 そう言って、クラインは外側から壁に思い切り鉄の靴でつま先蹴りを放つ。その蹴りの威力は凄まじく、崩壊寸前になった壁を見て満足そうに笑う。

 その後器用に壁に細工をし、魔物の仕業のように見せかける。


「まさかあの若造がここまで砦を立て直すなんて完全に予定外でした。この砦を陥落させてすぐさま国に戻る予定だったのに……だが、これでここも終わりですね」


 クラインは、ローデル帝国の西に位置するハルカ共和国のスパイだった。ローデル帝国の南西であり、ハルカ共和国に近いガルーラン砦を落とすために放たれていた。


「それにしても、あいつの言うスタンピード……。うちが何かしたのかね? だが、俺は何も聞いてないから違うのか? とりあえず、適当に流して逃亡したらいいか。俺だけなら陥落後も余裕で逃げられるだろう」


 クラインのスキルは『韋駄天(いだてん)』。速さのみに特化したスキルである。自分の足の速度は勿論、乗物、そして仲間の移動速度も上げることができる。

 クラインは破壊された壁を満足気に眺めた後、砦に戻っていった。






◇◇◇


 南門の補修を指示した後、俺は北門に出向いた。


「どこか脆くなってところがある、ってメーティスに言われたけど、どこだろう?」


 砦を強固にするために、各門の壁の脆いところ順に補修していた。北門にもどうやらあるらしい。


「んー。ここか。こっち側からみると、大丈夫そうに見えるな。魔物に襲われて外側が脆くなってんのかな? 一度外から見てみるか」


 外側から確認しようと、門を出ると明らかに崩れそうになっているところを発見する。


「なっ! これは魔物の仕業か? しかもここ、堀の一部が埋まって魔物が通れるようになってるじゃねえか……。気付いて良かった。ここを通って魔物達が壁を攻撃していたのか。北門は普段、攻められることがないから気付かなかった」


 俺はダイヤにこのことを伝え、すぐさま補修を行った。そして埋まっていた堀の一部を堀ることで再度堀として活用できるようにした。


「よし、次行くか」


 俺は様々な仕掛けを作るために再び動き出す。

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― 新着の感想 ―
[一言] この砦内にスパイはいますか?と言う質問した方が良かったのかも
[気になる点] 埋めた堀や壁に人為的な痕跡があると思うのですが、主人公は疑問に感じないのでしょうか?
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