商人を名乗るならキノコくらい取れないとね?
「自己紹介がまだだったわね。私の名はネオン。新人商人よ! 今までは販売しかしたこと無かったから目利きが苦手なのよね。けど、その分めっちゃ売るから!」
ネオンはそう言って、ない胸を張る。完全に子供。というかいくつなんだろう。
「俺はシビル。今は……何なんだろう、冒険者もどき?」
自分で言ってても意味が分からない。貴族という肩書を失った俺は何なんだ?
「冒険者って、シビル戦えるの?」
怪しいものを見るような目を向ける。その疑問は正しい。
「いや、ゴブリンが精々だ」
「……冒険者は止めておきなさい。早死にしたくないならね」
「ういっす」
コンビ組んだのはいいが、これからどうやって稼ぐんだろう? やっぱり俺が目利きで商品を集めて、露店でも開くのだろうか。きっとネオンは商人を名乗っているくらいだ、露店を開く伝手くらいあるのだろう。
「どうやって稼ぐんだ? 露店でも開くのか?」
正直に尋ねてみる。
「ふふふ。よくぞ聞いてくれたわね! シビルのスキルを活かして稼ぐ方法があるわ!」
「おおー」
実はネオンさん、優秀なのか。未だに露店で偽物掴まされそうになったドジっ子イメージが拭えていないが、改めなければならないな。
「ホワイトオパール茸の採集にいくわよ!」
ネオンは堂々と言っているが、何言ってるか分かんない。いや、分かるんだけど。
「なにそれ?」
「なんと一本、500,000Gよ!」
え、MAJIDEKA! キノコさん凄すぎる!
「嘘だろう!? なんでそんなのがとられてないんだ? 誰でも行けるところにないとか?」
「それもあるわ。C級魔物であるギャングプテラの巣の近くにあるの。そしてホワイトオパール茸は、ホワイト茸の中にしか育たないの。見た目は全く一緒のね」
大量の偽物の中から、本物を探さないといけない訳か。それにC級魔物って……この町で最も強いパーティがC級だったんじゃ……会ったら最後だな。
ギャングプテラは空を飛ぶ小さなワイバーンのようなものらしい。肉食で、オークを一撃で喰い殺すようだ。うーん、これは会いたくない。
「そしてなんと本物の確率は一万分の一よ!」
少なすぎだろ。化物の巣の中、一万分の一のキノコを探すとか、普通はしない。馬鹿もいいとこだ。高いのも納得である。
「だけど、シビルのスキルなら本物を見つけることができるでしょう? 聞いたところ、ギャングプテラが居るかどうかも分かりそうだし」
そう。俺のスキルなら、いくらでも探しようがある。勝つことは無理でも、魔物が居るか、離れるかもメーティスさんに聞けば。
いける。俺のスキルなら……。ホワイトオパール茸を採ることも。
「ああ。『神解』を使えば、可能だ」
「決まりね!」
俺達の商人としての最初の仕事はキノコ採集になりそうだ。
「これって商人の仕事か?」
つい疑問を口に出してしまう。それを聞いたネオンの形の良い眉が吊り上がる。
「商売には元手が大量に居るのよ! どこにあるのよ、そんな金! シビルの金と、私の50,000Gしかないのよ。そんな金で商売してもたかがしれてるわ!」
「そんなないのかよ」
むしろ良く商人を名乗ったな。一ヶ月も生活できねえだろそれ。
「まず最初はキノコで一発当てて、そこから大商人への道を切り開くの! これから私達の商会が大きくなったら、このエピソードが最初の冒険譚として語られる訳よ」
ネオンはそう堂々と宣った。そこまで妄想できるとは、中々の大物である。
ホワイトオパール茸は普通のホワイト茸と違い、魔術師が使う特殊な成分が含まれているらしい。それゆえ大変需要は高いのだが、現状全くホワイトオパール茸のみの栽培は上手くいってないようだ。それだけ貴重で需要があるなら、その値段も納得である。
ネオンが言うには、近くのセメン山にギャングプテラの巣があるらしい。キノコ採り用の道具を買い、明日行くことにする。
「シビル、貴方あんな宿で寝てるの? あそこは奴隷みたいに劣悪な環境でしょう!?」
泊まっている宿を伝えると、大いに驚かれた。あそこは安いが劣悪で有名らしい。結局、ネオンが泊っている宿を紹介してもらい、一室借りた。5,000Gと前より高いが、ぼろいとは言え、ベッドがあるだけで涙が出るくらい嬉しかった。
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