男前(美少女)
「今日はろくなことがないな……」
俺はその夜いつものように書庫で本を読んでいた。もはや日課である。
今日は疲れた。
『ここ一ヶ月以内に陥落の危険性のある襲撃はある?』
『イエス』
それを聞いて顔を顰める。
「まじかよ。本当にろくなことねえなあ。いったいどれくらい危険なんだ?」
具体的に調べることにする。
『その襲撃は二週間以上先?』
『イエス』
『三週間以上先?』
『ノー』
その後も尋ね続け、襲撃は17日後であることが分かった。
『襲撃のトップはC級以上?』
『イエス』
『襲撃のトップはB級以上?』
『イエス』
『襲撃のトップはA級以上?』
『ノー』
B級か。グランクロコダイル以来だな……。前より人は少ないが……手駒は増えている。
俺は森の魔物図鑑からB級以上を探す。
「こいつかね?」
俺はハイオーガのページを開く。C級魔物であるオーガを率い襲ってくるのだろうか?
『トップはハイオーガ?』
『イエス』
その後も尋ね続ける。襲撃数は千近くになるようだ。オーガも十匹程。かなり……というよりこの砦のキャパを大きく超えている。
「なぜこんな数が……? スタンピードか。森の魔物はそこまで規律がある訳ではないはずだけど。何かおかしいような……」
俺は考え込む。すると、扉が開く音を聞きとっさに顔を上げた。
そこには綺麗な銀髪を靡かせ、鍛錬後なのだろう汗で僅かに濡れたシャロンが現れる。
「どうした、大丈夫か? 顔が青いぞ。弟の件か? 別に皆あんなこと気にしてないぞ?」
シャロンが首を傾げ、俺を心配してくれる。
「ありがとう。いや、別の問題だ。実は十七日後襲撃がある。数は千。そしてトップはハイオーガだ」
俺は苦い顔でそう告げた。
それを聞いたシャロンは黙ったまま、考えこむような仕草を見せる。
「スキルで分かったのか。なら誤報ではないだろうな。便利だが……嫌なスキルだな」
シャロンは苦笑いを浮かべる。
「本当にな。ここに千の魔物に耐えきれる設備も人材もない。それに……」
ハイオーガと戦える戦力が居ない。ハイオーガと戦える者など、騎士団でも上位層だけだろう。グランクロコダイルで充分にその強さを知っている。
うちのトップは間違いなくシャロンである。だが、彼女でもB級のハイオーガをソロで戦える訳がない。
うちの上位陣を全て向かわせれば……ハイオーガには勝てるかもしれない。だがおそらく四方が囲まれることを考えると、他の門が持たない。戦力を分散させないと、砦が一瞬で陥落してしまう。そもそもここは砦というには貧弱すぎるのだ。
「分かっている。ハイオーガの相手ができる人が居ないと言いたいんだろう? 悩む必要も無いだろう。私が出よう」
シャロンはそう言って、妖艶に笑う。格好いい人だ。素直にそう思った。
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