BARETORUGANA
その夜俺は日課となっている書庫での読書を行っていた。とは言ってもすっかり本は全て読みきってしまい、最近はたまに来るシャロンとの交流の場となっている。
パラパラと森の魔物図鑑を読んでいると、扉の開く音がする。
「シャロン、訓練お疲れ様」
「……ああ」
いつもより素直に返事をするシャロン。
「シビル、実は戦術の素人だろう?」
突然話を切り出すシャロン。
BA☆RE☆TE☆RU!
突然の核心にパニックになる俺。何と言って、潜り抜ければいいんだ!
「な、なにを言っているんだ。今までずっと守ってきただろう?」
「ああ。確かに守ってきた。だが、それは深い軍略では無く、予知が中心だ」
仰る通りです。まあ分かるわなあ。
「別に責めるつもりも、誰かに言うつもりもない。だが、見たところ、お前は剣を使えない。なぜ軍に入ったんだ?」
「うーん、なんで入ったんだろう。流れかな?」
「流れ!? そんな理由でこんなところに来たのか?」
珍しくシャロンの無表情な顔が、驚きに変わる。
「勿論それだけじゃないんだけどさ。ここに来る前に、このスキルを使って人を救えたんだ。このスキルを使って誰かを救えるなら、役立たずと言われてたこんなスキルを持つ俺でも役に立てるなら……と思ったんだよ。この際、俺のスキルについてシャロンには話しておくよ」
俺はそう言って、『神解』について説明する。シャロンはしっかりと俺の話を聞いてくれた。
「なるほど、そんなスキルだった訳か。なら、あの予知にも納得だ。だが、スキルだけで救えるほど軍は甘くは無い」
「知ってるさ! だから今必死で学んで――」
「だからわたしが手伝ってやる。私は強いからな」
シャロンは目を逸らし顔を赤くしつつ言った。
え? 聞き間違い? シャロンが俺を手伝う? どういうこと?
沢山の疑問符で埋め尽くされる。
「っ! 別に要らないなら――」
「ありがとうシャロン! とっても助かるよ!」
俺はシャロンの手を握り、感謝を伝える。すぐさま弾かれたけど。
「言っておくが、変な命令に従う気はないからな! それにもっと鍛錬を積め。自分の身は自分で守れるようにな。今日の弓は……少しは良かった」
初めてのシャロンのお褒めの言葉である。それに顔がほころぶ。
「ありがとう! これからも鍛錬するから、力を貸してくれ!」
「ああ。これからも頑張ってくれ、雑魚隊長」
シャロンはそう言ってにやりと笑うと、書庫を去っていった。俺は突然のシャロンの言葉に驚いて、しばらくその場を動くことができなかった。
「雑魚隊長って、もう少し何かなかったのかよ。そして、どうして急に。けど、シャロンが協力してくれるのは大きい。期待を裏切らないようにしないとな」
俺は期待に恥じないように、今後も努力しようと誓う。
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