思わぬ来客
「まあ、大丈夫そうならいいけど。じゃあ僕は朝の訓練にいってくるから」
そう言って、ダイヤも席を立つ。最近は皆も真剣に訓練に取り組んでいる。それにより兵士達同士にも絆が芽生えている気がする。とても良い傾向だ。シャロンを除いて、だが。
兵士達が皆席を立っていく中、シャロンだけが残っていた。
「シャロン、もしよかったら、俺に剣を教えてくれないか?」
朝の訓練にシャロンが交わることで、他との交流をしてもらえたらという狙いだ。
「……お前は普段訓練にも参加してないだろ。軍師なら訓練は必要ないという考えかと思ったが」
中々痛いところを突かれる。確かに、訓練してもあまり剣は向いていなかったのか上達しなかったので参加していない。
「シャロンは剣技が卓越しているから、そんな人から教われば上手くなるかな~と」
「そんな甘いものではないさ」
シャロンはそう言って、席を立った。一人俺だけ食堂に残された形となった。
「ふう……知っているさ。それは俺自身が一番な」
俺はそう呟いた後、もはや日課となっているランドールとの交流タイムに移った。
「どう思う、ランドール? あの態度はないよなあ」
『ランドールは肯定してくれている?』
『ノー』
ノーなのか、ランドールよ。お前さんもツンデレだもんな。似たもの同士、ランドールとシャロンの方があるのかもしれない。いや、そうでもないか。
ランドールの考えは、メーティス経由で知るしかない。
「ランドールは肯定派なのか。似てるもんなあ」
そう呟くと、ランドールは静電気程度の電流を流されてしまう。
「いてっ! なんだよう……皆冷たいな。俺泣きそうだよ」
現状癒し枠がダイヤしか居ないのも良くない。どうなってるんだ。俺は現状を嘆きつつも、今できることを精一杯行うしかなかった。
そんなシビルの元に思わぬ来客が現れる。
「シビルのお客さんが南門前に来てるよー」
翌日の朝、ダイヤが俺の部屋へやってくる。
「客?」
誰だろうか? ここに俺が来ているのを知っているのは、イヴくらいだ。
「分かった。今いく」
俺はベッドから起き上がり、南門に向かう。そこで待っていたのは、良く知る姿だ。
「シビル、私に一言も無しに軍に入るってどういうことよ!」
掴みかからんばかりの勢いで、ネオンが迫って来る。
「ネオン! どうしてここが!?」
素直な驚きの声が出る。
「商人の情報網舐めるんじゃないわよ! 商人仲間の一人が、あんたが軍の女とデルクールを出るところを見てたわ。そこから辿り着くのに時間がかかったけどね」
まさかここまでやって来るとは。けど、俺のためにそこまでしてくれたのが嬉しかった。
「ありがとう、ネオン。ここまで来てくれて。そして時間が無くて、何も言わず去ってしまったのはごめん」
「……素直じゃない。別にあんたを責めにきたわけじゃないわ。無事でよかった」
そう言って、ネオンが俺の胸に倒れ込む。女の子の良い匂いが仄かに香り、少しドキドキした。
「ありがとう、ネオン。あえて嬉しいよ。けどネオンの言う通り、俺は商人には向いてなかったのか、なぜか軍人になっちゃったよ」
「戦えないくせに、馬鹿ね。けど、シビルならきっと凄い英雄になれるわ。私は貴方の強さを知っているから」
「そう言われると照れるな」
「ふふ。軍人が嫌になったらいつでもネオンビル商会に来なさい。貴方の場所は空けておいてあげる」
ネオンは妖艶な笑みを浮かべる。いつものネオンとは少し違う雰囲気だ。
「ありがとう、ネオン」
「しばらくは付近の町『バラック』で活動する予定だから何かあったらここに連絡して」
そう言って、シビルに紙を手渡す。そこにはネオンが泊っている宿の名前が書いてあった。
「ああ。またな、ネオン」
「うん。またね」
ネオンは用が終わったのか、笑顔で帰っていった。この後勿論、多くの兵士にからかわれたのは言うまでもない。
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