武器庫を見よう
あの劇的な勝利から一週間、ガルーラン砦は快進撃を続けていた。そのおかげでお通夜のように暗かった砦に活気が戻っていた。
「俺達はここで死ぬと思っていたが……まだ長生きできそうだな!」
「俺なんて、町に子供と嫁を置いてきてるんだ。シビルは俺達の希望だ」
兵士達も希望を持ち始めたのか、訓練にも精が出る。皆の顔から暗い影が消えたのが嬉しかった。
「本当に、皆の顔明るくなったね」
「ああ。良かった」
ダイヤの言葉に素直に頷く。今の所、上手くいっている。ダイヤには悪いが、毎日魔力を使い、砦の補修をお願いしていた。土魔法を使えるのはダイヤだけだから負担が集中している。
「いつもすまないな、ダイヤ。他にもできる人がいれば良かったんだが……」
「全然だよ! 皆僕にお礼を言ってくれるし、やりがいがあるよ」
「そう言ってくれると助かる」
「シビルも毎日、色々考えてるんでしょ? 皆知ってるよ」
魔物ごとに戦い方を考えないといけない。弓矢の数も限られるため、皆の特徴を踏まえて作戦を練らないといけないのだが、それが難しい。やはり、軍略に関してはまだ素人なのだ。
「俺の作戦で、皆を生き残らせるんだ。必ずな」
「ありがとう、隊長」
最近皆から隊長と言われるようになった。司令官は別にいるための称号だろう。
「よう隊長。隊長の言う通り、武器を槍に替えてから調子がいいんだ」
兵士の一人が、槍をあげながらこちらに声をかけてきた。彼は元々剣を使っていたが、メーティスに尋ねたところ、槍が向いているようだったのでそう伝えた。
皆の向いている武器をある武器の中で尋ね、彼等に伝えた。強制は良くないが、割と一度くらいならと皆使ってくれた。気に入った者はそのまま武器を替え鍛錬をしている。
地味な変化だが、向いている武器を知れるだけでも少しでも有利になるだろう。
前方から歩いているシャロンが目に入る。
「シャロン、おはよう! 朝の鍛錬か?」
俺はシャロンに声をかける。あの剣技を見る限り、絶対にこれからシャロンの力も必要だ。それに同期としては仲良くしたいものだ。
「……」
シャロンは、軽くこちらに目を向けると挨拶も返さずそのまま去っていった。まだ心は閉ざされたままのようだ。
「相変わらずだねえ」
ダイヤも苦笑いだ。あんな態度でも虐められないのは、偏にあの強さのおかげだろう。
ダイヤと話していると、世話役であるクラインがこちらへやって来る。
「あーい、シビル。武器庫見たいんだって? 今から向かうし、来るかい?」
「クラインさん、お願いします」
今までお願いした武器を持ってきてもらっていたが、在庫も確認しておいた方がいいと考えお願いしていた。
武器庫は地下にあるのか、かび臭い石造りの階段を下る。鉄製の厳重な扉を鍵で開けて中に入る。
「意外にあるだろ? 皆すぐに死んじまうから、ってのもあるんだがな」
「そうですね。ってなんですかこれ!」
俺の目線は一つの美しい白い弓に釘付けになる。ボロボロの武器だらけの武器庫の中に、一つだけ素人の俺でも分かるほど素晴らしい弓があった。
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