大魔法使い
『最初の魔物の襲撃は三日後ですか?』
『イエス』
俺は昨日のうちに魔物の襲撃時間を割り出していた。勿論何の魔物が何体、いつ、どこから襲撃してくるか。全てメーティスに聞いていた。
この砦の死者が多いのは、勿論練度が低いのもあるが一番の要因はこの全く機能していない砦である。
全く役に立たない、穴だらけの壁。この砦は魔物が町に行くのを止めるために作られた。魔物にこの砦を無視された場合は、追ってでも戦わなければならない。そこを返り討ちにされてやられることも多い。
「次はここに壁を頼む」
俺はダイヤに指示をしながら要所要所に壁を建てる。そして、手の空いている者達に手作りの柵を壁の前方に建てさせる。
「なんでここなの?」
「三日後に西と東からラックボア十三体が砦を襲う。だからまずは襲撃場所を中心に補強していく」
「えっ!? ラックボアが十三体も? 大変じゃないか!? けどなぜシビルはそんなことが分かるの?」
ダイヤが驚きつつも、尋ねてくる。ラックボアはD級の猪系魔物である。ラックボアは、なぜか左角か、右角のどちらかしか生えていない、ラック(不足)しているためそう呼ばれている。昨日読んだ本に書いてあった。
「俺のスキルは、固有スキルでな。いつどんな魔物が来るかあらかじめ分かるんだ」
「ええっ!? そんなスキル聞いたことないよ……」
「なに、すぐに皆信じるさ。俺の言う通りに魔物が来るんだからな。今作っているところに、ラックボアがやって来る。場所も数も分かっていればいくらでも対処はできる。次そこに穴頼む。深さは二メートルくらいで」
「天才軍師って言われるくらいだからあり得るのかな? できたよー」
これからはダイヤの土魔法で出来る限り急造の要塞を作り上げるしかない。ダイヤには悪いが、仕方ないだろう。
「ありがとう、本当に助かる」
「いや、僕みたいな無能が役に立ててうれしいよ」
ダイヤは自らを卑下する。
それにしても、ダイヤはここに飛ばされるほど、酷いとは思えない。むしろこの生成速度、将来は大物になりそうだ。
『ダイヤは魔法の才能がある?』
『イエス』
やはりか。大器晩成型なのかもな。
「ダイヤ、俺は自分は強くないが、人を見る目だけはあると思っている。君は将来、きっと大物になる。それこそ大魔法使いと呼ばれるほどね。だから自分を信じろ。君は優秀な魔法使いだ」
俺は真剣な声色で伝える。
「ありがとう、シビル」
それを聞いたダイヤが笑う。今はお世辞で言っていると思っているだろう。だが、これからきっとそれは本当になる。
俺はそれを本当にするためにも、ここを、皆を守らなければ、と思った。
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