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シャロン

 俺は馬車に揺られて早二日、自分の選択は間違っていたのだろうか、と考える。


「そういえば、イヴを助けるかどうかは、メーティスさんに聞いていなかったなあ」


 と呆然と呟く。昨日までいた駐屯地では俺の赴任先を聞いた瞬間、気の毒な人を見るような顔をされた。どうやらよほど評判が悪いらしい。


 聞いた話では三年で、赴任した者達が全員入れ替わるらしい。戻れるから? 違う。死ぬからだ。おかげで軍のゴミ溜めと言われているようだ。軍に必要ないと思われた者を送る場所となっている。

 三日前に採用されたばかりなのに、あんまりだ。


『逃げた方がいい?』

『ノー』


「あっそう」


 手続きもせずに、逃亡なんてしたらお尋ね者だもんなあ。どうしてこうなった。


「けど、捨てる神あれば拾う神ありってね」


 そう言って、俺はある羊皮紙を取り出す。それはヨルバさんが一筆書いてくれた物だ。封蝋されているため読めないが、俺のために書いてくれたようだ。

 前線に出なくていい、って書いてくれたんだろうか?


「そろそろ着くぜ、兄ちゃん。それにしても、あんな評判の悪い場所に良く行く気になるな。俺ならいくら積まれても行きたくないぜ」


「俺もそう思いますよ」


 商人のおっさんにすらその悪評は広まっている始末だ。

 だが、俺も覚悟を決めるしかないだろう。このままじゃ俺まで死ぬ。


「では、いっちょ軍師として頑張りますかね」


 皆を死なせないために来たんだ。ポジティブに俺が必要な場所だと考えよう。

 こうして俺は地獄の砦と言われているガルーラン砦に辿り着いた。






 まず目につくのは廃砦かと思わせるようなボロボロの砦である。棄てられて盗賊の根城と言われても信じるくらいだ。

 過去にはしっかりと砦を守る壁があったのだろうが、今はいたるところが破壊されており、壁としての役割もあまり果たされていない。


 活気も全くないのが、外からも伝わってくる。そして視線の先には広大な森。この森から出る屈強な魔物から帝国を守るのがこの砦の役割らしいが、到底守り切れるとは思えない。

 罅割れた門から、猫目の青年が出てくる。


「君が最後の新人かな? 僕はクライン。君たちの世話係と言ったところかな? こっちへどうぞ」


 クラインはとても人当たりの良さそうな笑みを浮かべている。


「これからよろしくお願いいたします。シビルです!」


「元気いいねえ。ここでは貴重だ」


 クラインに連れられ、砦の中に入る。中もやはりボロボロである。辿り着いた部屋では既に二人の男女が座っていた。


「今回来た新人さんは全員で三人。皆軽く自己紹介でもする?」


 クラインに言われ、新人である男が立ち上がる。


「初めまして。ダイヤ、といいます。僕は、魔法使いなんだ。土魔法が主かな……?」


 と最後は自信なさげに言う。茶色の天然パーマが特徴の男だ。年齢は俺と同じくらいで二十前後だろうか。


 続いて女性が立ち上がる。


 身長は百七十センチほど。すらりと伸びた綺麗な足に、引き締まった美しい体躯。まるで神が作り出したかのような抜群のプロポーションを誇っていた。


 絹のような艶のある腰まで伸びた銀髪は、この空間では輝いて見える。

 人形のような整った顔に、吊り上がった目をしていた。


「シャロン……」


 とだけ言ってすぐに座った。全てに興味が無さそうな冷たい目をしている。この姿……どこかで見たような? 

 あ! 空き部屋で揉めていた女性だ!


「私はシビルと言います。ここでは軍師として派遣されました。皆が生き残れるよう頑張るのでよろしくお願いします」


 俺はその事には触れずに、挨拶をし頭を下げる。


「シビルは軍師なんだねー。よろしくね」


 ダイヤは子供のような笑顔で、手を差し出してくる。


「よろしく頼む」


 俺とダイヤが握手を交わしていると、シャロンが立ち上がる。おっ、握手かな?


「無能の指図は受けない」


 と俺に言うと、部屋を出ていった。

 なんという失礼さ……。突然の言葉に言葉を失ってしまった。


「か、彼女、皆にああだから気にしないで」


 ダイヤのフォローは果たしてフォローになっているのだろうか?


「まあ、挨拶は一応終わったようだから次は司令官にご挨拶に行きましょうか」


「はい」


 ここのトップか。どんな人なんだろうか?

お読みいただき、ありがとうございました!


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