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ヨルバ御婆ちゃん

「あんた達、何やってんだい?」


 静かに、だがドスの効いた低い声が廊下に響く。その声の先には、先ほど話していた婆さんだった。それを見た男が両手を上げる。


「これはこれは……ヨルバ様。ただの戯れですよ。ただの」


 そう言って笑う。


「そうかい。これからその子は同じ軍の仲間なんだ。仲良くするんだよ」


 つまり、合格ということだ! 


「やったね、シビル!」


 イヴが喜びながら俺の手を握り、跳びはねる。子供みたいでとってもかわいい。


 だが、貴族は不快そうな様子を隠そうともしない。


「こんなゴミを入れるなんて……人材不足もここまできましたか。帰るぞ、お前ら」


「「はっ!」」


 男は俺の方へ歩いてやってくると、通り過ぎる直前囁いた。


「お前は地獄に送ってやる。覚えていろ」


 不吉すぎる捨て台詞。今受かったばかりなんだから、ちょっとくらい喜びに浸らせて欲しい。


「なんだったんだ、あいつ」


「あんた、中々短気だねえ。あいつはクラントン伯爵の次期当主だよ。クラントン家は人事にも顔が効く。おそらくやばいところに飛ばされるよ」


 と笑いながら言う。まじかよ。


「おばあ様の力でなんとかなりませんかねえ?」


「そこまで面倒見れるかい。男が啖呵きったんだ、自分でなんとかしな」


 そういわれるとぐうの音も出ない。畜生。


「あんたの要望通り、軍師待遇さ。とても戦えるようには見えないからね」


「ありがとうございます」


 どうやら幸先は悪そうだ。イヴと同じなどあのクラントン坊やが認めると思えないし。


「だ、大丈夫だよ! シビルなら……」


 イヴが励ましてくれるが、語尾が弱い。


「そこのお嬢ちゃんは、メルカッツに赴任だ。あそこは最前線だ。頑張りなよ」


「は、はい!」


 ヨルバさんの言葉に、背筋を伸ばしたイヴが返事をする。メルカッツは俺でも知っている都市だ。ローデル帝国の北西の都市で、我が故郷アルテミア王国に接している都市である。隣国に接しているということは必然と戦も多い。まあ、最近アルテミアは隣国と戦争なんてしてないから大丈夫だろうけど。

 そのことを伝えるとヨルバさんは去っていった。


「メルカッツかあ。新しいところでも頑張らなきゃ」


 やる気に溢れているイヴが眩しい。


「俺も頑張るよ。もしイヴが困っていたら助けに行くから」


「ありがとう。けど、シビルも無理はしないでね。シビル戦えないのに、無茶するから心配……」


「軍師だから大丈夫だよ」


 そうは言いつつも、大丈夫なんだろうか。あの馬鹿のせいで、俺はどこに飛ばされるのだろうか。


 その夜、イブは新しい赴任先であるメルカッツに旅立っていった。


 そして、俺の初めての赴任先は三日後に決まった。ガルーラン砦。一年で九割以上が死ぬと言われている地獄の砦である。

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[一言] 「そうは言いつつも、大丈夫なんだろうか。あの馬鹿のせいで、俺はどこに飛ばされるのだろうか。」 止める者がいなかったら、殺されていたかもしれません。いずれ利子を付け、たっぷりとお返しをして欲…
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