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閑話 秘密の薬

 シビルを含めたシビル隊はデミ聖国での戦いを終え、ようやくグロリア領に戻って来た。

 戦争後の手続は多く、シビルや他文官達はその仕事に忙殺されていた。


「せっかく戦が終わったのに、忙しそうねえ」


 そう呟いたのはネオン。グロリア領の御用商人にして、ネオンビル商会会長を務めるシビルの友人である。


(久しぶりに会おうと思ったのに、あんな死んだ顔していると声もかけづらいわね。何か差し入れでもあげようかしら?)


 ネオンは商売柄様々な商品を扱っているため、珍しい商品も良く知っていた。


(ちょこ、って言う菓子を最近入荷したし、これでも差し入れるか)


「姉ちゃん、面白い物貰ったぜ」


 ネオンの弟、テトラがネオンに声をかける。

 その手には謎の飴玉のような物を持っている。


「なにそれ? 変な物買ったんじゃないでしょうね?」


「違うよ。付き合いのある商人がくれたんだ。惚れ薬だってよ。姉ちゃんも、シビルさんに使ってみたら?」


「何言ってんのよ、あんた。そんなの効く訳ないじゃない……」


 ネオンは呆れた声を出す。

 惚れ薬。

 どんな人間も一度は考えつく魔法の薬。


 意中の相手を惚れさせたいと、恋する人間なら思うことはあるだろう。


「だよなあ。捨てるか」


 テトラも信じている訳ではなかったのか、笑いながら言う。


(本当馬鹿なんだから……そんなものある訳ないでしょう? そんな物があったら世の中混乱しているわよ。そんなものある訳……ある訳……)


 ネオンは考える。


「テトラ。それは私が処分しておいてあげる」


 そう言ってネオンはテトラから謎の飴を取り上げる。


「なんだよお。欲しいなら、欲しいって言えばいいのに」


 テトラのぼやきを無視して、ネオンは今後について考えていた。


「気を遣ってくれてありがとうな、ネオン」


 シビルは素直に礼を言う。

 ようやく仕事が落ち着いたタイミングで、ネオンからお茶でもしないかと誘われたのだ。

 新作の菓子とお茶をふるまいたいと。


 その気遣いにシビルは素直に頷いた。

 シビルの屋敷の応接間で二人は座っていた。


「べ、別にいいのよ。気にしないで。これ、ちょこって言うお菓子。とっても甘いらしいから疲れた体に染みるわよ」


 そう言って、ネオンはちょこを出す。

 真っ黒な見た目は、見たことないシビルからは珍しい物に映った。

 だが、一口食べると、シビルの顔に笑顔が浮かぶ。


「美味いね」


「そう? 良かった! 今、紅茶もできるから待っててね」


 ネオンは紅茶をいれると、シビルに差し出す。


「ありがとう。良い匂いだな」


 シビルは紅茶を受け取ると、ネオンがやたらこっちを見ているのに気付く。


「どうかしたか?」


「え? いや、新作の感想が聞きたくて……」


 どこかしどろもどろのネオンに違和感を感じるシビル。


「ああ。今飲むよ」


(惚れ薬入れているなんて、言えないに決まっているじゃない……)


 シビルはそのまま紅茶を飲む。

 飲んだシビルが眉を顰める。


(やっぱり変な物だったのかしら⁉)


 ネオンが不安そうな顔で見る。


「……いつもより甘さ控えめだけど美味しいよ」


「そ、そう」


 シビルの感想に安心するネオン。


 それから数分が経過したが、特にシビルに変化はない。


(特に変化はなさそうね。やっぱり偽物なのかしら? 念のためにいつもより女の子らしい服装してきたのに……)


 内心がっかりするネオン。


(まあ、そんなものよね)


 惚れ薬のことを忘れて、ネオンは久しぶりにシビルと話す。


 話したいことはいっぱいあったのだ。

 だが、そんな時変化があった。

 シビルの顔がいつもより赤い。どこか熱っぽい表情で、ネオンの顔を見つめている。


(え? 嘘っ⁉ 本物だったの、あれ!)


 正直偽物だと思っていたネオンは驚きを隠せない。


「ネオン……」


 シビルは立ち上がると、ネオンの方へ向かう。


(シビルが真っ赤になった顔でこっちに!? このまま私押し倒されちゃうの!?)


 ネオンは咄嗟に目を瞑る。


(けど……惚れ薬の力なんかじゃやっぱり……)


「だめーーーーー!」


 ネオンは近づいて来たシビルを、思い切り突き飛ばした。


「ぐえっ!」


 シビルはそのまま振り飛ばされる。


「痛た……お腹が痛いから、後ろの薬を取って欲しかったのに……」


「え? そうなの?」


 シビルは過重労働によって体調を壊していた。


(効いてた訳じゃないのね……そりゃそうか)


「体調悪いなら、無理してこなくて良かったのに」


「そんな悪くはなかったし、久しぶりにネオンにも会いたかったからね」


 ネオンはその言葉に小さく微笑んだ。

 その後、しばらく話した後解散となった。

 店に戻った後、ネオンは先ほどのことを思い出す。


「結局効果はなかったけど、それでよかったのよね。惚れ薬で惚れられても仕方ないもの。けど、どきどきしちゃったわ」


 とネオンは笑う。


 一方、シビル。

 今日はもう仕事を止め、ゆっくりと過ごしていた。


「今日のネオンは服装もそうだし、なんか色っぽかったような。ドキドキしたよ」


 惚れ薬は本物だったのか、果たして。


新作です! 一章完結まで書き溜めてあるので毎日投稿します!

ハイファンの最強系コメディ作品となっております!


チートジョブを貰って異世界に転移されたにも関わらず、なぜか無職と判定されてしまった主人公。

パーティに入れてもらおうとするも、無職はちょっとと半笑い断られる日々。

そんな彼の元に集まるのは大喰らい&ギャンブル狂いでパーティを追い出されたケモミミ美少女や、魔導士を名乗るのに十秒で止まるロボットしか使えないロボットオタクなど問題児ばかり。

チートジョブで怠惰生活どころか借金返済しかいない系主人公の冒険譚となります!


タイトル

与一は怠惰に暮らしたい~神にチートジョブをもらって異世界転移したはずなのになぜか無職と判定されました。パーティに入れてもらえず、気付けば余り者同士でパーティを組んでいた件~


URL

https://ncode.syosetu.com/n9235jh/


あらすじ

幸せに睡眠を決めていた俺は、突然自称女神の謎の女に起こされる。

自称女神の女はチートジョブを与えると話していたが、眠い俺は適当にあしらっていたところ、突然異世界に転移されられてしまった。

え? ジョブについて何も聞いていないんですけど?

金もないのでジョブを活かすためにとりあえず冒険者になる俺。

あ、鑑定があるんですね? ならジョブ分かるじゃんと思ったが、なんと鑑定結果は無職と判定されてしまう。

話が違うんですが……?

おそらく最強の俺はなんとかパーティに入れてもらおうとするが、

「いやあ……無職はちょっと」と半笑いで断られる日々。

そんな俺の元に集まるのは大喰らい&ギャンブル狂いでパーティを追放された怪力ケモミミ美少女や、魔導士を名乗るのに十秒で止まるロボット(ゴーレム)しか使えないロボットオタクなど問題児ばかり。

あれ? チートジョブで怠惰生活どころか借金返済しかしてないんだが。ちくしょう、必ず金持ちになって夢の怠惰ライフを送ってやるからな!







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