公表
デミ聖国中にランダル大司教から大事な発表があるというお触れが流れた。
ランダルはその民を思う温和な人柄から人気も高いため、多くの国民がその言葉を聞こうと教会前の広場に集まった。
「なにが発表されるんだろうな?」
「最近戦争があったから、それの戦勝報告じゃねえか?」
「戦いは負けたって聞いたぞ?」
「帝国側はそりゃそう言うだろうさ」
広場はこれからの発表を楽しみに、多くの国民が顔を輝かせながら集まっている。
そんな中遂に、広場の中心の台座にランダルが現れる。
「ランダル大司教ーーー!」
「こっちを見てくれー!」
ランダルを見て国民は皆笑顔で手を振っている。
それに比べてランダルの顔は真剣そのもの。
その様子に気付いたのか、徐々に国民も静かになっていった。
民が静かになった後に、ランダルは口を開く。
「今日は皆様お集まりいただき、ありがとうございます。既に察しているしている人もいるかもしれませんが、今日は少し告白をするために皆様に集まって頂きました。聖国の暗部についてです」
ランダルは深刻そうな声色で静かに語り始めた。
その雰囲気を察して、皆は静かに耳を傾ける。
「今から話すことは脅迫によってではなく、全て真実です。聖国はメリー族を暗殺者集団として指名手配をしておりますが、聖国の中心部は昔からメリー族を懇意にしており、政敵をメリー族に暗殺させ国家の安寧を図っておりました。私は暗殺行為自体を悪いとは思っておりません。国を運営することは綺麗事だけでは成り立たず、汚れ役が必要なのは間違いありません。ですが、それをメリー族だけに押し付けることはフェアではありません」
ランダルの突然の告白に国民達がざわめく。
「どういうことだ?」
「冗談か?」
「メリー族の一部の方々に、聖国のために汚いことを押し付けていたのは事実です。本来であれば、聖国のために辛いことをしていただいた彼等に、感謝と報いをするべきはずであるのに、暗殺者という烙印を押し指名手配をしたのは許されることではありません。よって聖国は聖騎士にメリー族の指名手配を取り下げ致します。ここに教会の代表として今まで被害にあったメリー族に深く謝罪を申し上げます。大変申し訳ありませんでした」
ランダルはそう言うと、深々と頭を下げた。
少しの間、広場には沈黙が流れた後、大きな騒ぎになる。
「ふざけるな! 今まで騙していたのか!」
「自分で殺させておいて、罪を擦り付けたのか!」
「処刑されたメリー族はもう帰ってこないぞ! どう責任を取るつもりだ!」
義憤に燃えた国民がランダルを責め立てる。
その様子を宿の最上階の窓から俺とシャロン、メロウ、そして捕らわれのロズウェルが見下ろしている。
「遅い……遅いんよ! すべてが! 謝罪されてももう皆は帰ってこない……!」
メロウは大粒の涙を瞳から溢れさせた。
罪のないメリー族も多くが殺された。
ランダルの声色からは後悔が、罪の意識がしっかり感じられた。だが、全ては遅すぎた。
一方、ロズウェルはその様子をどこか冷ややかに見ていた。
「これで満足ですか? こんなことで本当に変わるとお思いですか? すぐに他の大司教が、撤回して終わりですよ。何も変わりません。ランダルも首を挿げ替えられるでしょう。愚かな男です」
嘲るように言う。
完全にどうとでもなると考えている顔である。
「だが、それはどうかな?」
俺は広場を見る。広場に新たに現れた男の顔を見て、ロズウェルは驚愕の表情を浮かべる。
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