謎の襲撃
「ガハッ!」
俺の腹部を貫通するように光線が通り抜ける。口から血が漏れた。
致命傷か? 誰が……?
脳内を疑問符で埋め尽くされる。だが、それを考えている時間はない。
『二発目は来る?』
『イエス』
まだ終わっていない。
『右に避けるべき?』
『イエス』
俺はその回答を聞いた瞬間、横に跳ねる。
次の瞬間、再び同じ方向から光線が放たれ、俺の元居た場所を貫く。
狙われている。
凄腕の魔法使いに。
俺は痛む腹部に耐えながら矢を番える。
『敵の位置は一キロ以上先?』
『イエス』
『敵の位置は二キロ以上先?』
『ノー』
『敵の位置は一・五キロ以上先?』
『ノー』
一キロ以上、一・五キロ以下か。
『矢の向きは十五度以上右?』
『ノー』
少し矢の狙う位置を修正する。
『矢の向きは十度以上右?』
『イエス』
膨大な質問により、弓を構える位置を一瞬で調整する。
『弓の構える位置はここで良い?』
『イエス』
『ランドール、敵は一キロ以上先だが……行けるな?』
『もちろんだ! 遠距離戦はこちらの方が上と教えてやれ!』
俺はありったけの魔力を込めると、矢を放つ。
『付与矢・『疾風』!』
放たれた矢は壁を貫き、そのまま飛んで行った。
だが、ランドールの返事は良くないものだった。
『相棒、すまねえ……。敵の奴、矢が当たる直前に姿を消しやがった』
『消えた?』
どういうことだ?
『こちらは光線で攻撃してきた敵は逃げた?』
『イエス』
『敵は襲撃を諦めた?』
『イエス』
敵を特定している時間はない。
傷は深いが、ここに居てたら魔法使いに殺される前に敵兵に殺される。
「メロウ、念動力で聖女を持てる? なんとかこの場を突破して逃げる!」
「了解や」
俺はその場を去る直後、セレンの持っていた剣を見つけ、それを持って逃げる。
「さっきの音は……何があった!? 他にも敵が居たのか?」
シャロンが叫ぶ。
「分からん。逃げよう。もう再度襲撃はない。一階に下りたら西へ」
「……分かった。すぐに終わらせてやるから、もう少しだけ耐えろよ!」
シャロンは敵で埋まっている扉の先に走ると、敵を一蹴する。
「ついてこい!」
「ロズウェル様が捕まっておられる! お助けしろ!」
襲い来る騎士達の中を強引に突破し、階段を下りる。
「この人数を撒くのは厳しいぞ!」
「とりあえず倉庫に戻ろう!」
俺達は倉庫に戻ると、そのまま元来た地下通路に潜る。
「なんだ、これは!? ここからあいつらは侵入して来たのか! 追え!」
後ろから怒涛の勢いで追ってくる騎士達。
「大丈夫か? このまま付いてこられまたまずいぞ」
俺の怪我のせいで移動速度自体は遅いので、心配しているのだろう。
「信じろ!」
少し地下通路を走るとその先に見知った顔が居る。
「ダイヤ! 頼む!」
「了解!」
俺の言葉を聞いたダイヤが、両手を地面に当てる。
すると、俺の背後の通路がみしみしと音を立て始める。
「やばい……崩れるぞ!」
騎士達も崩れることを察し逃亡しようとするも、もう遅い。
凄まじい轟音と共に俺の背後にあった地下通路が完全に崩れた。
多くの聖騎士達が生き埋めになっただろう。
「ダイヤ……最近見ていないと思ったが、生きていたんだな」
「酷いよ! シビルに言われてずっとここで待機してたのに!」
シャロンの言葉に泣きそうな声で返す。
「だが、助かった」
シャロンはダイヤの肩をポンと叩く。
こうして俺達はなんとか敵将とも言えるロズウェルを捕縛し、自陣に辿り着いた。
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