タイトル未定2024/05/07 21:17
シビル達がロズウェルの居る二階に侵入する少し前、セレンは親衛隊に支えられながらロズウェルの元を目指していた。
セレンを支えていた親衛隊の一人が呟く。
「セレン様……この戦いに本当に正義はあるのでしょうか? メリー族が殺していた者は聖国の政治に反対していた者が殆どです。あの女が言うように、もしや聖国は本当にメリー族と関わっていたのでは?」
それを聞いたセレンから怒りが漏れ始める。
「お前……本気で言っているのか? 我等聖国が暗殺者であるメリー族を使っていたと、本当にそんな愚かなことを抜かすのか! あんなゴミ共の言うことをお前は信じるというのか!」
セレンは親衛隊の首を掴んだ。親衛隊の顔が痛みで歪む。
「セレン様、お、落ち着いてください。実際に彼らが殺していたのは聖国にとって邪魔な者が多く――」
次の瞬間、セレンの拳が親衛隊の頬に叩き込まれる。そのまま吹き飛ばされた親衛隊が地面に倒れ込む。
「くだらないことを抜かすな。次は拳ではすまさんぞ!」
「すみませんでした……」
「行くぞ」
セレンは他の親衛隊に支えられながら進むが、その顔色は悪い。
(敵の虚言に惑わされおって。聖国がそのような卑劣な真似をする訳ないだろうが。あんなゴミとかかわりなど……虫唾が走るわ。早くロズウェル様に回復してもらわねば。傷が深い)
セレンは砦の中を進む中、異変に気付く。
二階を守っている騎士達が皆やられている。
「敵襲か!? お前達、ロズウェル様を守るぞ!」
「ですが……セレン様の傷は深いです。我々だけが」
「馬鹿を言え! 聖女様の危機に駆けつけない聖騎士団長など要らんわ!」
セレンは怒鳴ると、傷を抑えながら走る。
扉付近まで辿り着くも、特に戦闘音がない。それがセレンの警戒心を逆に高めた。
(なぜだ? 聖女様は守りに関しては、並の聖騎士よりはるかに強い。突入すべきか? いや、罠の可能性もある。話声が聞こえるような?)
セレンは部下をその場に待機させると、扉に耳を当てる。
「ば……馬鹿な……」
そこで聞こえてきた内容は、セレンの想像を大きく超える内容であった。
◇◇◇
セレンは呆然と、その場に立っていた。
その目はどこか虚ろで、視線はふらふらとさ迷っている。
「ロ、ロズウェル様、先ほどの話は本当でしょうか?」
震えるような声で尋ねる。
その言葉を聞いたロズウェルは微笑みながら答える。
「聞いてしまったんですね、セレン。はい。全て事実ですよ。メリー族は私達聖国の命により暗殺をしていたんです。彼等が勝手に人殺しをしていたなんて真っ赤な嘘。実は罪を擦り付けられていた悲しい種族ってわけです」
「そ、それであれば正義は? 彼等に罪はなかったということですか?」
セレンは真っ青な顔で尋ねる。
「正義は私達自身ですよ。正義は勝ったものが決める。歴史がそう証明しているでしょう? 私も貴方も、そうやって人を裁いてきたじゃない。あえて言うなら、愚かなことが罪でしょうか?」
そう言って、ロズウェルがメロウを見る。
セレンは動揺しながらも、剣を握る。
「あんたは、全てを知ってもまだこちらに剣を向けるんか? 誰も殺してなどいない私に」
メロウの言葉にセレンは一瞬ビクりと体を揺らす。
「罪……罪とは? 命令したのは聖国? ならば悪いのは?」
セレンは悩んでいるようだった。
全てを知り、全ての元凶は聖国と知った。
だが、セレンは今まで自らを絶対的な正義の代行者と考えていた。
その自分が罪のないメロウを殺そうと動いていた事実に、動揺しているようだ。
不敗の雑魚将軍第2巻発売まで後二日です(*'▽')
発売記念というのもなんですが、発売日の5月15日まで毎日更新します!
改稿により、より熱くなった第2巻を是非ご覧ください!





