真実
俺達は三人だけで地下通路を進む。
「なぜこんな通路があるんだ?」
「敵の籠っている建物は元々砦だったものだ。砦の持ち主が逃走路として用意しておいた通路だろう」
予めメーティスでこの通路は確認していたためこの砦をこちらの本陣として使わなかったという事情がある。
砦の真下まで辿り着くと、上部の壊れかけの扉を開け地上に出る。
砦の倉庫だろうか。汚く掃除もされておらず誰も居なかった。
倉庫を出て中央に向かっていると、二名の騎士がこちらに気付く。
「敵しゅ――」
「付与矢・【迅雷】」
俺は敵の初動より早く、眉間に矢を叩きこんだ。
小さく血を吐きながら騎士達が倒れる。
「侵入がばれる前に向かおう」
俺達は二階への階段を見つけ、あがる。
二階の大きな扉の前には十人程の騎士達が護衛に残っていた。
おそらくこいつらが最後だろう。
「貴様は大将のシビル! 殺せ!」
「お前が死ね!」
親衛隊ではあったが、シャロンとメロウが居る今大した障害ではない。
数分で片付け、最後の扉を開く。
そこには純白の修道服を纏った少女が椅子に座って、こちらを見て微笑んでいる。
その手にはカップが握られており、動揺の様子は微塵もない。
「あら、お客様のようですね」
「くだらねえ嘘で大勢を巻き込んだ気持ちはどうだい、聖女様?」
俺の言葉を聞いても、微笑んでいる。
「そちらこそ、くだらない正義で多くを犠牲にした気分はどうですか? 不敗のシビル」
「戦争を起こしておいてよくもそんなことが言えたな。お前は知っているだろう? 本当の歴史を」
「あはははは! 本当の歴史? メリー族の嘘を信じてここまで来たのですか? 力に溺れ多くの者を殺した殺人者の一族が、正義の名の元に裁かれ、追放された。それだけのことですよ?」
「お前達デミ聖国の者が国のためとメリー族を使い殺させたのに、使い終わったらお払い箱じゃあ筋が通らねえだろ。正義のためと信じ、手を染めた者も居たはずだ」
「そんなのそこの女の嘘に決まっているでしょう。馬鹿ですねえ」
「俺のスキルを教えてやる。『神解』。イエスかノーかで、全ての真実が分かるスキル。そのスキルが言っている。お前達の話は全て捏造だとな!」
俺の言葉を聞いたロズウェルは少しの間口を空けて呆けた後に笑う。
「なるほど! だから真実を知りここまで来たと! 面白いスキルですねえ。けどなんでも分かるスキルでも、分からないことはあるんですね。世の中は知らないことが良いこともあるんですよお?」
「例え真実が残酷であっても、嘘の方が優しくても、俺は真実を知って傷つきたい」
「真実? 我々に散々使われ、最後に捨てられたという事実ですか? メリー族は本当に愚かな一族でした。この国のため、民のためと言えばどんな暗殺でもおこなってくれました。根が善人なのでしょうねえ。殺すことに罪悪感を覚えつつも、正義のためと言えば苦悩しつつもおこなったと」
それを聞いて、メロウが叫ぶ。
「メリー族がした暗殺自体を肯定する気はない。だが、命令したあんた等がそれを言うんか!」
「ふふ。罪人の血は絶やさないといけませんから。ほら。おしゃべりしていたら人が来ちゃいましたよ」
ロズウェルの言葉と同時に、扉が開く。そこにはセレンが立っていた。
不敗の雑魚将軍第2巻発売まで後、4日です!





