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神の唄

「メロウ、信じろ」


 シャロンはメロウを呼んで優しく微笑んだ。

 それを見てメロウは覚悟を決める。


「私は……死なない! シャロンちゃんはお前なんかに負けたりせん! お前とは違う本当の騎士や!」


 メロウの言葉を聞き、シャロンは笑う。


「ふふ、まだ負けられない理由ができたな」


「すぐに後悔させてやる」


 セレンが苛立ったように呟くと、再びその剣を振るう。

 盾も失ったシャロンは必死で躱すも、全身が血塗れであり、もはや戦いと呼べるかも分からない状況である。


「弱いなあ。何も守れんお前が聖騎士を名乗るとは。お前を殺した後、しっかりとメリー族も、愚かなお前の主もあの世に送ってやる」


 セレンが嘲笑うように言う。

 シャロンは自分の力が最近のシビルに比べて劣っていることに気付いていた。

 初めて会った時は自分より弱く、だが皆のために戦うその姿を見てその背中を支えたいと思った。


(一番傍でシビルを支えたい。民を、仲間を守りたい。力が欲しい! 今まで剣を握らなかった日などない。何が足りないんだ、私には……)


 血を流しすぎ、意識が不明瞭になりながらも考える。


(この女にあって、私にないものはなんだ? 信心深さなのか? 神を思う気持ちが足りないのか? 神への信仰心は負けているかもしれないが、民を、そして仲間を思う気持ちは誰にも負けていないはずだ!)


 シャロンを剣を置き、両手を組み、静かに祈りを捧げた。

 ただ民のことを、仲間のことを思い祈った。それはそれは、綺麗な所作であり、普段から祈っている聖騎士団の者も、セレンすらも息を呑んだ。

 それを見て勘違いしたセレンが言う。


「死を前にして、ようやく信心を取り戻したか。ひと思いに殺してやろう」


 祈りを終えたシャロンは静かに剣を取った。


「お前にメロウを殺させはしないよ……そしてシビルはきっとこの国に平和をもたらす。私はその剣なのだ。その私が……お前如きに負けてなるものか! 神の唄(アポロン )!」


 天からの光が降り注ぎ、シャロンを照らし出す。


「あれは……神の光! セレン様以外にも、神の唄を使えるものが居たのか!?」


 聖騎士団の騎士達がどよめく。

 敵であるにも関わらず、シャロンを拝む者すら居た。


「見本を見せてくれて感謝しよう。お前を超えて、私は更に上に行く」


 シャロンは金色に輝きながらそう告げた。

 その黄金に輝く姿を見たセレンは動揺を隠せなかった。


「なっ……!? なぜお前如きが! 神を崇拝もせず、罪人を庇う罪人でしかないお前が! ありえない! 何かの間違いだ! 間違いは正さねばならない!」


 セレンは動揺で震えながらも、その大剣でシャロンの首を狙う。

 だが、その剣はシャロンの大剣に弾かれる。


「ようやく見えたぞ、お前の剣が! 間違いかどうかその目で確かめろ!」


 シャロンの連撃がセレンを襲う。

その激しい剣戟に、まるで地上に舞い降りた天使が争っているかのようなその光景に周囲は息を呑んだ。

 この瞬間、確かにこの戦場は皆二人の戦いに戦うことも忘れ集中していた。


「綺麗だ……」


 誰かがぽつりとつぶやいたその一言は、喧騒の中に消える。

 遂にシャロンの一撃がセレンの鎧を砕き、鮮血が舞う。


「ぐうっ……! 忌々しい! 神の代行者である私に逆らうのは、神に逆らうも同然! どこまで罪を重ねるつもりだ!」 


「神の刃も安いもんだな。私一人殺せないのだから」


「黙れええええ!」


 セレンが怒りにまかせ大振りに剣を振り下ろす。

 そのコンマ数秒の隙を見逃さず、シャロンの横薙ぎがセレンを斬り裂いた。

 小さなうめき声と共に、セレンが地面に倒れ込む。

 一瞬騒がしい戦場から音が消えた。

そして次の瞬間、怒号のような歓声が上がる。


「シャロンさんが、セレンを倒したぞーーーー!」


「敵将を、覚醒者を破ったぞ!」


 シャロンの日々の努力を知る部下達は、泣き喚かんばかりに叫んでいる。

 だが、シャロンはすぐさま倒れたセレンに剣を振り下ろす。

 それを阻むように、数十を超える親衛隊がセレンを守るためにその身を投げ出して時間を作る。


「セレン様を……逃がせ!」


 正に死に物狂いで大量の兵がシャロンに押し寄せる。

 シャロンの前には紙も同然であるにも関わらず、次から次へと命を賭して時間を稼ごうとするその姿は狂気すら感じさせた。


「きた……」


 俺はそう呟くと、魔法矢を生み出すと、天に放つ。


付与矢(エンチャント)・【雷】」


 戦場の誰もが見えるほど、矢が天に弧を描く。

 これは合図。

 この合図と共に、敵本陣である石造りの建物めがけて背後の森から白虎隊が飛び出す。


「敵の別動隊だ! お前等、ロズウェル様のため殲滅しろ!」


 建物の中からおそらくロズウェルを守るために残されて居た騎士達がわらわらと姿を見せる。

 激しい攻防が始まった。だが、親衛隊の数だけで千近いためそう簡単に突破はできないだろう。

 とはいえ、背後からの強襲や騎士団長の敗北で完全に聖騎士団は混乱している。


 シビルは馬を走らせ、シャロンとメロウの元へ向かう。


「今がチャンスだ。行こう、メロウ。君の呪縛を解き放つために」


 シビルはメロウに手を伸ばし、そう言った。

不敗の雑魚将軍2巻の発売が、一週間後にまで近づいて参りました!


4割くらい改稿及び書き下ろしてますので、WEB版より更に熱い作品となっております(*'▽')

購入や予約して下さると泣いて喜びます!是非是非!

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