シャロンVSセレン
◇◇◇
シャロンはセレンの強さを一合打ち合っただけで感じ取っていた。
現在自分より上にいるということも。
だが、それでも叫ばずにいられなかった。聖騎士というスキルを得ながらも傲慢な考えの元友人を断罪しようとする目の前の女に。
「生まれが罪な者など存在しない! 天使の唄」
シャロンの体に光が集まり、その全身が神々しく輝く。
聖騎士の技として最も有名な技、天使の唄。
その光は使用者を守り、時に武器となる。
「ほう、見事。天使の唄も使えるか。聖騎士団に居れば立派な部隊長にもなれたであろうに。お前に本物の聖騎士を見せてやろう」
セレンはそう言うと、大剣を構える。
セレンは大剣をまるで木の棒を振るうかのように軽々と振るい、シャロンに斬りかかる。
その一振り、一振りの威力たるや、まさに怪物。
その風圧は周囲の兵士達を吹き飛ばし、受け止めるシャロンの止めの剣が大きく弾かれる。
しかしシャロンは弾かれることはあれども、暴風とも言える攻撃を耐えきっている。
シャロンはその腕からセレンの鍛錬を感じ取る。
だが、それ故に悔しかった。
「それほどの力を持ち、なぜ誤ったことに使う!」
セレンはその指摘に首を傾げる。
「誤ったこと? お前のような愚か者には分からんか。これは神からの裁きなのだ! このまま切り刻んでやる予定であったが、気が変わった。聖騎士には更に上がある。罪人に見せるには過ぎた力だ……! 神の唄」
セレンはその大剣を天に掲げる。
次の瞬間、天から大いなる光がセレンを照らす。
それを見た聖騎士団の兵士達が涙を流しセレンを拝み始めた。
「神が……神の力がご顕現なさる」
セレンの背中には翼が生え、その全身は金色に輝いている。それは正に地上に舞い降りた神のように、神話の一ページのように見えた。
シャロンはその強大な魔力を感じ取り、身震いを起こす。
セレンはその大剣を軽く振るった。
シャロンは咄嗟に手に持った大盾で身を守る。
だが、その一閃は大盾を断ち、シャロンごと切り裂いた。
シャロンはその一撃を受け、体を崩す。
死んでいないのは天使の唄のお陰であろう。
体を包む神の光がシャロンを守った。
「死なんのは腐っても聖騎士ゆえか。だが、もう終わりだ」
セレンは勝ち誇ったようにシャロンの元へ歩く。
「舐めるな! 神の唄!」
シャロンも負けずに大剣を掲げるも、何も起こることはない。
その様子を見てセレンは笑う。
「ハハハハハハ! お前のような信心の浅い者に神が力を貸す訳がないだろう? 所詮は罪人を庇う愚か者よ」
「罪なき者を罪人と裁こうとする神など、こちらからお断りだ」
「無礼な……貴様も神の刃の元に散るがいい」
再びセレンの一閃がシャロンを襲う。
シャロンはそれを咄嗟に躱す。
その様子を遠くからご機嫌で見ている者が居た。今回の敵軍のトップとも言える聖国聖女ロズウェルである。
「うふふ。セレンちゃん、やっぱり強いわねえ。一般兵の戦いはこちらが圧されているのかな? けど、私が来ていることを忘れてもらっちゃ困るわね。『聖域』」
ロズウェルはそう呟くと、杖を天に掲げる。
すると、傷を負っていた聖騎士団の兵士の傷が治り、前線の者の動きが突然よくなった。
「ロズウェル様の聖域だ! お前等、戦えーー!」
「ロズウェル様万歳!」
傷を負って下がっていた兵が再びゾンビのように蘇り襲い掛かってくる姿は、帝国軍の戦意を削いだ。
「あれが聖女の聖域か。使われるとなんて厄介なスキルなんだ。全方位への能力強化と、回復とは。お前等退くな! 聖女のスキルは魔力消費も大きい。長くは続かない!」
シビルは部下を鼓舞しながら、シャロンの戦いを見守る。
いざとなれば自分も参戦する気であった。
シャロンは体中を斬られながらも、致命傷を避けなんとかセレンの前に立っている。
その目は決して死んでいない。
「良いのか。メリー族! お前のせいで、この女は死ぬぞ? お前が首を差し出せば、この女が死ぬことはなかっただろうに」
傷だらけのシャロンを見て、メロウは咄嗟に目を逸らしてしまう。
「私のせいじゃ……」
「お前が、すぐに死ななかったからだ! お前にチャンスをやろう。今すぐ自ら首を斬れ。それでこの戦いは終わりだ!」
メロウは肩を震わせ、自分の手を見つめる。
(私が死ねば、シャロンちゃんは助かるんか? なら……)
自分が殺されても戦おうという覚悟はあった。だが、仲良くなったシャロンの傷だらけの姿を見て心が揺らぐ。
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