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信じているけど、信じてない

 翌日は軽く打ち合わせをした後、昼以降は各自自由行動となった。既に計画は十分に話し合ったからだ。グランクロコダイルは昼頃、西門側から百を超える群れを率いて、デルクールに襲い掛かって来る。

 俺はどうも落ち着かずに、町の中を徘徊していた。


『爆弾は明日の十二時までに間に合う?』

『イエス』


『伸鉄棒は明日の十二時までに間に合う?』

『ノー』


『十二時十分には間に合う?』

『イエス』


 どうやら伸鉄棒は開戦には間に合いそうにないらしい。とはいえ、この程度の遅れは仕方ないだろう。既に何回も確認している。意味はないが、ただ確認している。脳内で、伸鉄棒で口を開けたグランクロコダイルに爆弾を投げ込むイメージトレーニングを行う。


「落ち着かないの?」


 後ろから、突如声がかかる。声だけで分かる。イヴだ。


「ああ。緊張からか、中々食事も喉を通らないんだ」


 俺はやっぱり臆病者なんだろう。


「ちゃんと食べないと、だめだよ! それじゃベストな動きはできないんだから。今の私達に出来ることはコンディションを整えることだよ? 私が消化の良い物を作ってあげる!」


 手を引かれて向かった先は王国騎士団の宿舎である。


「今は誰も居ないから、大丈夫だよ。入って」


 イヴのような美人に、今日は誰も居ないって言われるの……なんか照れるな。と馬鹿なことを思いながら中に入る。

 中は流石騎士団の宿舎、無駄な物が無く殺風景だった。


「座ってて。すぐ作るから」


「はーい」


 イヴはエプロンを身に着けると、キッチンに向かった。しばらくすると、美味しい匂いが漂ってきた。


「消化に良いもの、ということでお(かゆ)を作ったよ。味は薄めかも」


 目の前に出されたのは、ネギや卵の入ったお粥である。ネギの仄かな香りが食欲をそそる。一口、口に入れると、優しい味がした。心にしみる優しい味だ。

 無言でただ貪った。実はお腹がすいていたんだと、お椀が空になった後に気付いた。


「ごちそうさまでした」


「お粗末様でした。少しは元気でた?」


「ああ。これで明日、あの化物に爆弾をぶち込んでやれるよ」


 俺はにやりと笑った。目の前で優しそうな眼で俺を見つめている彼女を守りたい、と素直に思った。


「私も、王国騎士団の強さをお見せしましょう!」


「頼んだよ、騎士様」


「お任せあれ」


 イヴはそう言うと、優雅なお辞儀をした。まるで物語の騎士のような美しい所作だった。その後もたわいもない話を日が暮れるくらいまでした後、宿に戻った。


「さっきまで、とてもあたたかな気持ちだったのに……一人は駄目だな」


 床に座り、再び明日について考える。実はまだメーティスに聞いていないことがある。今更聞いても仕方ない、というのもあるが怖くて聞けていないことが。

 けど、逃げてばかりもいられないだろう。


『メーティス。明日、俺はグランクロコダイルに勝てる?』

『ノー』


 メーティスはただ真実だけを伝えてくれた。不思議とそこまでショックはなかった。俺だって勝てるとは思えない。

 だが、今回はメーティスに言われたからと言って、退くわけにはいかない。


「聞かなきゃ良かった。今までずっとお前を信じてたけど……今回はお前の答えをひっくり返させてもらう……!」


 俺は拳を強く握り締める。その後、俺は早めに眠りに着いた。不思議と、よく眠れた。

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[一言] シビル「メーティス、明後日 勝てる?」 メーティス「.....」
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