シビルVSボピン②
『最初の攻撃は爪?』
『イエス』
『俺は右によけるべき?』
『ノー』
『俺は左側によけるべき?』
『ノー』
『前方によけるべき?』
『イエス』
『二秒後によけるべき?』
『ノー』
『三秒後?』
『ノー』
『一秒後?』
『イエス』
俺はすぐさま前方に躱す。龍の懐に入った俺はすぐさま再びメーティスに尋ね続ける。
膨大な質問を経て最適解の動きを。
そうでなくては、行動の遅い俺は一撃であの世生きだろう。
龍にとって俺は周囲を飛び回る蠅に過ぎない。
だが、蠅とは中々殺し辛いものだ。
天井が破壊され、宙で龍と戦う俺を下で多くの者が見ていた。
「あれはボピン様のアルタイルだ!」
「戦っているのは領主のシビルだぞ!」
「シビル様は大魔境を生き延びた英雄だ! 龍でも勝てる!」
と両陣営の者が大声をあげて俺達の戦いを見ていた。
キンググリズリーより動きが速い。
動きを先読みしていても、反撃の隙が見当たらない。俺は必死で回避に専念していた。
「戦闘スキルでもないのに、全て躱し切るとはどういう理屈でしょうか? 本当に全ての未来が見えているのですか?」
ボピンは驚くように呟いた。
一方、まとわりつく俺に一撃も与えられない龍の苛立ちはピークに達していた。
「どうした? 一発も当たっていないぜ? 当ててみろよ」
「ギャオオオオオオオオオオ!」
俺の言葉が通じているのか、怒りの咆哮を上げた龍は大きく口を開けた。
ここだ!
俺はブレスの方向を読んだ後、それに合わせて弓を引き絞る。
「付与矢・【聖】」
光を纏った矢が敵のブレスに合わせて放たれる。ブレスは俺からわずかに逸れるも、俺の矢は龍の右目を射抜いた。
「ギャオオオッ!」
龍が叫び声をあげる。
聖属性を込めた矢なら通じる。ランドール様々である。
「わずかに逸れたか」
ブレスの回避に時間を取られたため、頭部でも目に刺さってしまった。
龍を仕留めきるにはもっと威力が要る。魔力を込める時間が……。
「驚きました。これほどとは……!」
ボピンはそう言うと、魔力を集中させる。目が充血し、力を集中させている手が僅かに震えている。
「出なさい!」
号令と共に、地面から巨大な動くスケルトンが這い出してきた。
全長数十メートルはあるだろう巨大スケルトンが瞬く間に直立する。
「これ以上増えないで欲しいんだが……」
俺は呟く。ドラゴンほどではないにしろ、奴に回す余裕がない。
顔を歪める俺の元へ、シャロンが駆け寄って来た。
「私が全て、引き受けよう。何秒必要だ?」
シャロンはただ、そう言った。
龍を仕留めるレベルまで矢に魔力を込めるのに、時間が必要なことを察したのだ。
龍、スケルトン、リビングアーマー。S級からA級まで、三体の攻撃を受け止め続けることは生半可なことではない。
だが……。
「二十秒、頼めるか?」
「その程度でいいのか? 一撃で沈めろよ。英雄になったんだから」
シャロンはそう言って笑うと、俺の前に立つ。
「ここから先は通行止めだ、魔物共」
シャロンは大盾を左手でしっかりと握り、体を覆った。
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