イヴVSベッカ
町ではイヴ達が別動隊と激しい戦いを繰り広げていた。
イヴは敵の幹部ベッカを見据え、レイピアを向ける。
一方、ベッカの体は急速に膨張していく。そして、すぐに全長二メートルを余裕で超える人狼に変化した。
狼の巨大な頭に、全身が銀色の毛に覆われている。獣の足ではあるが、二本足で直立し、その目には確かに知性が感じられる。
彼のスキルは『人狼』。変身型のスキルだ。
イヴは次の瞬間、彼を見失った。
(速いっ!)
イヴはその右目でその爪で襲い掛かろうとするベッカを捉えた。
なんとか回避しようと前方へ転がったイヴだが、その腹部からは血が流れる。
(躱しきれなかった……。動物に変身するタイプのスキルは、その身体能力の高さが特徴なのよね)
「今の一撃を躱すってのは……流石は騎士様だなあ。だが、指揮官のあんたが俺に構っていていいのかな? 仲間がどんどん減っていくぜエ?」
イヴの指揮がなくなったグロリア兵は通常通り交戦を開始した。だが、その場合数の少ないグロリア兵が不利だった。
「すぐに済むからなんの問題もないわ!」
イヴはそう言って、レイピアで突きを放つ。突きと共に、風の弾丸が放たれるも、ベッカはその身体能力で躱すと、その牙でイヴに襲い掛かる。
イヴは右掌を敵に向けて翳すと、そのまま敵の攻撃を受け流すよう、風の膜を張る。
「風帷」
ベッカは風の膜により攻撃を受け流され、壁に突っ込んだ。
イブは至近距離では不利だと感じ、風を纏い宙に逃げる。
立ち上がったベッカは、つまらなそうにイヴを見つめる。
「なんだ、この風は。こんなんで殺せると思っているのか? 舞踏会でダンスを踊っていた方があってるぜ?」
煽るベッカを無視して、イヴはレイピアを振りかまいたちを放つ。
「風鎌」
幾重に放たれるかまいたちを、ベッカはその俊敏な動きで躱すと、しゃがみ込む。
ベッカの強靭な足が、めしめしと音を立てる。
次の瞬間、ばねの様に跳ねたベッカは宙に居るイヴの目前にまで迫る。
「救済を」
その言葉と共に、ふるわれる一撃。それはイヴを地面に叩きつけた。
「くっ!」
風に作られたクッションで衝撃を抑えたものの、決して無傷とはいかなかった。イヴは右足の痛みを感じた。
だが、立ち上がると、無言でレイピアを構える。
「すぐに救ってやる!」
ベッカはその両腕を振るいイヴに襲い掛かる。
イヴは何とか躱しながら隙を伺うも、遂に背中が家屋の壁に当たる。
「鬼ごっこは終わりだ!」
ベッカはイヴの首めがけて巨大な口を開け食らいつく。
「風帷」
イヴは再び風の膜を生み出すと、ベッカの攻撃を逸らした。ベッカの牙が壁に叩き込まれる。
「逃がすか!」
ベッカはすぐさまイヴを探し、振り向いた。
「風壁」
イヴは風で見えない壁を作り出すと、そのままベッカに押し当てる。それによりベッカの体が壁に挟まり、身動きが取れなくなる。
「この程度で潰されると思ったか!」
ベッカは押しつぶすのが目的と感じ叫ぶ。
だが、イヴの目的は別にあった。
「これは固定。まだこの技は……扱いきれてないから。風嵐!」
イヴはそのレイピアをベッカに突き刺す。次の瞬間、レイピアから轟音と共に、まさに嵐と言える暴風が生み出された。
「なにを……グアアアアア!」
その暴風はベッカの腹部に巨大な風穴を開け、周囲を、イヴの体すら傷つける。
数秒後、そこにはピクリとも動かないベッカと、体をいくつも切り裂かれたイヴの姿があった。
「敵の幹部ベッカは私イヴが討ち取った! ここでの戦いはグロリア軍の勝利だ!」
「「「おおおお!」」」
イヴの勝鬨に呼応し、グロリア兵が叫ぶ。まだ勝負はついていない。だが、確かに勝利の振り子はグロリア側に傾いた。
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