暴れすぎなんだよ
俺達グロリア軍本隊はスラムへ向けて進軍を開始した。
俺達を最初に出迎えてくれたのは、ボピン達ではなく大量のアンデッドだった。
「ああ……」
紫色に変色し、焦点の合わない元スラムの住民だったアンデッド達が亡霊のように俺達の前に立ちはだかった。
俺は変わり果てたスラムの住民に哀悼の意を込め、目を瞑る。
そして次の瞬間、号令をかける。
「もう救えはしない。剣を振るえ! 彼らを解放しろ!」
「「「おお!」」」
兵士達がアンデッド達を討ち取り、全身をする。
その背後にはボピンファミリーが弓を持って構えている。
「死者を盾にして……汚ねえ趣味だ。だが、俺がその程度も読めねえと思っているのなら、舐め過ぎだ」
弓を構える敵構成員達に、グロリア軍の騎馬隊が突っ込んだ。その先陣を切るのは勿論シャロン。
シャロンは別動隊として裏側を走らせていた。
弓兵達は突然の騎馬隊に混乱を隠せない。次々と討ち取られ、そしてアンデッドに変わっていく。
「殺してもアンデッド化なんて、うっとおしいスキルだ」
メーティスによると、ネクロマンサーでもアンデッド化できる数には限りがある。およそ千。
それにボピンはアンデッド化に全力を注いでいるのか前線に出てこないようだ。
「殺した敵はおそらくアンデッド化する。頭を潰せ!」
辛い指示だが仕方ない。ボピンファミリーは味方がアンデッドになっているにも関わらず血走った目でこちらに襲い掛かってくる。
まさしく狂信者だった。
激しい攻防が続く。
人数は半分程度だがこちらは善戦していると言えるだろう。だが、突破できない。このままではボピンに届く前に余力が尽きるだろう。
騎馬で暴れまわっていたシャロンがこちらにやってくる。
「おい、どうする? このままじゃジリ貧だぞ。無理やりにでもボピンの場所までいくか?」
「いや、それはまだ早い。それにそろそろ……頼りになる味方が来る」
俺はそう言って、見上げる。スラムの建物の屋上に一人の男が立っていた。
太陽に反射され姿ははっきり見えない。だが、そのシルエットは良く知る姿だった。
「大魔法使いの手助けが必要かい?」
「ああ。お前の力が必要だ」
そこにはダイヤの姿があった。
「お任せあれ」
ダイヤは笑うと、屋上から地上に降り立つ。
「シビルは先に行ってて? ここは僕が片付けるよ」
こちらには三百を超える敵が押し寄せてきている。
「おい、流石に敵が多すぎる! ダイヤ、無茶だ」
「信じろ、シャロン。うちの大魔法使いをな」
ダイヤは微笑むと、地面に手を当てる。
すると、みるみるうちに敵構成員達が居る地面が凹み始める。
「お、おい。どうなって……⁉」
突然地面が変形し始めパニックになる構成員達。凹んだ地面はやがて巨大な穴に変わると、構成員達を閉じ込める。
それに追い打ちをかけるように土でできた土砂がその穴に濁流の如く流れ込む。
一瞬だった。一瞬で数百人の敵が地中奥深くに叫び声と共に沈んだ。
今までとは出力が段違いだ。土変形と土精製の二種類のみの魔法をひたすら鍛え上げたダイヤの魔法は今や地形すら変える魔法へと変わっていた。
「ここは頼んだよ、ダイヤ」
「頼まれた。久しぶりに会ったんだ。早く終わらせて戻ってきてね」
「ああ、任せろ。シャロン、行くぞ!」
俺達はダイヤにその場を任せると、ボピンの居るアジトへ向かった。
俺達は元ゴランのアジトへたどり着く。古い扉を開けると、そこには座りながらこちらを見つめるボピンの姿があった。
「ここまで来ましたか。あの寡兵でよくもここまで来れたものです。未来予知のおかげでしょうか?」
「部下が優秀でね」
「ですが、ここまで来れたら勝てると思われたのなら心外ですよ。私はこの強さでここまで上り詰めたのですから」
ボピンがそう言うと、ボピンの背後に二体の巨大な動く鎧が現れる。A級アンデッド系魔物リビングアーマーだ。
「てめえは……暴れすぎなんだよ」
俺は静かにそう告げた。
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