自分の住処
「冗談でしょう? 勝つためには時に犠牲は必要デス。それが分からない者は敗北いたしますヨ?」
「大丈夫だ。忘れていたよ。俺は英雄って言われてたんだ。英雄って言うのは……どんな逆境でも勝つんだよ。仲間も……部下も、領民も全部救う。少し不利かもしれないが、ちょうどいいハンデだな。皆も知っていると思うが、俺は不敗の男だ。皆に無理を強いる形にはなると思うが……皆力を貸してくれ」
俺は頭を下げる。
「今度は私が借りを返す番だね。それに……領民を守るための無茶ならいくらでもするよ!」
イヴはそう言って笑う。
「曲がりなりにも俺達は領民を守るための兵士。ならば無理をするのは当然だ」
ライナスは腕を組みながら頷いた。
他の皆も頷く。
「ありがとう。では作戦を説明しよう。まず敵は五百ずつ、計千で町を荒らすつもりだ。イヴ、ライナス、二人に各百五十人預けるからそれの対処を頼む」
五百を百五十で止めろ、とはかなりの無茶だ。
「分かったわ」
「任せろ」
二人とも二つ返事で受け入れてくれた。
「策は後に個別で説明する。別に敵を全滅させようとか思わなくていい。生き残ってくれ。残りの千人でスラムに突入しボピンを討つ」
俺は皆に策を伝えた。
夜まで続いた作戦会議を終えるも、リーシェンはこちらを見つめている。
「納得がいっていないか?」
「とてもじゃないが勝てるとは思えまセン」
「戦は数じゃなく、人ってことだ。大丈夫……俺達にはまだ仲間がいる」
俺はリーシェンにそう言って、屋敷を出た。俺は、なんとなく住処を追い出されたゴランに会いに行った。
ゴランは町の外れに簡易的なテントを張って生活していた。生活力高いなこいつ。
「シビル!? さ、さん……。どうしたんすか」
ゴランは俺が来た瞬間、顔を強張らせた。
「別に何もしねえよ。明日、俺達はスラムに乗り込む。明後日にはあいつらは追い出してやるよ。それを伝えに来ただけだ」
「本当ですか! それは良かったです……」
ゴランはどこか複雑な顔をしていた。
「自分の力で、住処を取り戻せなくて悔しいのか?」
「そ、そうっすね。俺達は社会のゴミって自覚はあります。でも、その居場所すら自分で守れねえなんて、ってのは思います。それでも、生きたもん勝ちなんで、ここにいます」
「すぐに掃除してやるから安心しな。じゃあな」
なんともいえない顔をしたゴランを置いて俺は屋敷へ戻った。
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