覚悟を
屋敷の会議室にはグロリア領の主だった者達が勢ぞろいしていた。
会議の内容は勿論、今後のボピンファミリーについてだ。
俺はメーティスを使い、調べた情報を皆に伝える。
「明日、ボピンファミリー全三千名が動く。分隊千人が町を襲いに、残りでスラムの人を襲うつもりのようだ。ボピンはスラムに残ることから、本隊はスラム側だろうな」
俺は皆に伝える。
「町を襲うって……うちは全軍入れても千人くらいしかいませんよ! とてもじゃないが守り切れません!」
文官であるグスタフが声を荒げる。
「全軍でボピンを狙うしかないでしょう。半分に分ければ、どちらも全滅ですヨ。ここで負ければ、より多くの犠牲が出マス」
『今の戦力で、戦力を分けて勝てる?』
『ノー』
『全軍でボピンを狙えば勝てる?』
『イエス』
全軍なら届く。
千の敵が町に放たれたら、町の被害は無視できない数になるだろう。金のない新米男爵ゆえ、兵が居ないのが全ての原因だ。
「ふざけるな! 民を守らずに何が騎士だ! 我々は民を守るためにここに居る!」
シャロンが大声を上げる。
「だが、現実問題、町側に兵を偏らせた場合スラムの住民は全滅でショウ? 敵は我々を分散させたいからわざわざ分けている。目的は少数でスラム側に向かうシビル様の首ですヨ。勝てなきゃ結果的に全滅デス。全てを拾おうとするのは愚者のやることデス」
それにリーシェンが淡々と答える。
リーシェンの言うことは正しい。町だけを守りスラムの住民を全員見捨てるか、町を捨て手薄になったボピンを討ちに行くか。
皆の顔が暗くなる。
そもそも戦力差が大きい戦だ。兵士の数が少ないうえに、新兵ばかり。その上、敵は切れ者。
「勝てる訳がない……。スラムは諦めて町を守り、援軍を呼びましょう。パンクハット子爵に頭を下げて助けを」
グスタフが絞るような声で言う。
「ボピンを本気で討つつもりなら、敵兵が分かれた時こそ、チャンスです。私は全軍でボピンを狙うべきだと思いますヨ。勝利なくしては、何も守れまセン。我々がここで負けてはより多くの犠牲が出マス。必要な犠牲では。正論では何も守れませんヨ」
その言葉に誰もが顔を落とした。皆、敗北や犠牲をイメージしてしまっている。
「ああ……その通りだ。分かってるさ」
「流石に、これは納得してくれて助かりますヨ。少しだけ無茶をするんじゃ、と思いましたカラ」
勝てなきゃ誰も守れない。そりゃあ正論だ。ここで負けたら意味がない。
だが、俺は自分が生き残るために強くなったのか?
違う!
俺は味方も、皆を守るために強くなったはずなんだ。
たとえ、シャロンやイヴ、仲間は生き残ったとして、守るべき領民が死んで皆で笑いあえるのか?
笑えるわけがない。
俺はもう領主なんだ。守るべきものは部下達だけじゃない。
「全面戦争だ、迎え撃つぞ」
俺は両の頬を叩き、気合を入れる。
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