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救済

 スラムで最も大きい洋館は今やボピンファミリーの本拠地になっていた。

 夥しい人数が、その洋館を中心にうろついている。その様子を見たスラムの者達は誰もが顔を曇らせもう平穏は訪れないのだと嘆いた。

 その洋館のエントランスからうめき声が聞こえる。


 そこにはボピンに首を絞め持ち上げられるスラムの青年の姿があった。しばらく呻いたのちに、青年はこと切れた人形のように静かに首をだらりと下げた。

 次の瞬間、青年の肌が緑色に変化し、体が腐乱していく。青年だった何かは、焦点の合わない怪物、アンデッドに変貌した。


「出来上がり、ですねえ。私の芸術品、彼は気に入ってくれるでしょうか? 真綿で締められるように、少しずつ削っていきましょうか。私のスキルは長期戦にも向いているのですよ」


 出来上がったアンデッドを見て、邪悪に笑うボピン。

 彼のスキルは『屍術師 (ネクロマンサー)』。死んでいる者は人だろうとなんだろうと、何でも操れるスキルである。

 アンデッドは無言で洋館から出るとスラムに繰り出した。


 ボピンは椅子に座ると、魚の骨を嚙み砕きながら食す。

 そんなボピンに部下の一人が尋ねる。


「ボピンさん、何で骨ばかり食べるんですか?」


 それを聞かれたボピンは骨を飲み込むと口を開く。


「私の母の味なんですよ。私の母は毎日、魚の骨を私にくれました。骨以外食べた覚えはありません。 私のためと言って、毎日しつけられました。救済されかけたことは、数えきれないほどです。そのお礼に、私が母を救済したのです。 こんな世界では死しか救済などない、と私に教えてくれたのです。その教えは、今も私の胸に……」


 ボピンは胸を抑えながら、祈るような仕草をとる。その姿は熱心な信仰者にしか見えなかった。


「な……なるほど……」


 思いのほか、重い理由に部下は返す言葉を失った。


「そんなことはどうでも良いのです。明日、五百、五百の二組で町を襲わせなさい。残りの二千人弱はここに残り、スラムの者を襲わせます」


 ボピンの言葉に、部下達が歓声を上げる。


「承知しました。ですが、大多数をこちらに残すんですか?」


「おそらく本隊はこちらを、というより私を狙ってくるでしょう。なら、それを待ち受けます。この人数なら挟撃を受けることもない。さあ、グロリア領を救済しましょう」


 戦いは近い。

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