前哨戦
戦いが近付いていく中、シビルの屋敷も戦の準備に追われていた。
皆が装備の準備に追われる中、少ない私物を布袋に入れ、立ち上がる者が居た。
「どこに行こうとしてるんだ?」
俺の声を聞き、驚いた顔でこちらを振り向く。俺の顔を見て、どこか呆れたような顔になる。
「主。未来が読めるというのは、厄介ですネ。逃げるんですヨ。うちの戦力ではとてもじゃないが、ボピンファミリーに勝てるとは思えませんノデ」
リーシェンははっきりと言った。勝てるとは思えないと。裏組織に居たからこそ、ボピンファミリーの恐ろしさを知っているのだろう。
「別に無理に引き止めたりはしないさ。少し話そうか」
俺はそう言って、リーシェンの部屋に入る。
「構いませんガ……引き止めなら聞きませんヨ」
「また主人を探す旅に出るのか?」
俺の言葉を聞き、リーシェンの顔色が変わる。
「相変らず、何でも知ってますネ。知りすぎるとろくなことがありませんヨ?」
「そう、俺はなんでも知っている。未来もだ。未来を読める俺が逃げないことがどういうことか分かるか?」
「勝てるとでも言いたいのですか?」
「ああ。必ず勝てる」
俺はにっこり笑いながら言う。
「人数でも、質でも勝っているとは思えませんガ?」
「本当に負けると思ったらいつ逃げてもいい。だが、俺は不敗の男だ。今一度信じてみろ。必ず、俺が勝利に導いてやる」
「随分大口を叩きますネ。それに騙された訳ではありませんガ……もう少しだけ貴方を観察しましょうカネ」
どこか嬉しそうにリーシェンが言う。この戦いの結末に興味を持ったらしい。
まずは……先兵を叩く。
三日後、グロリア領にわが物顔で侵入してくる集団の姿を捕捉する。
商人に偽装しているが、皆服の中には武器を持っていることが伺える。
「もうすぐ敵は隘路に入る。そこでいっきに狩り取るぞ」
隘路とは崖に囲まれるような細い道で、大部隊の通行が困難な場所である。敵兵は六百だが、崖に挟まれて通行する場合、連携も難しい。
「「「はっ!」」」
敵が隘路に侵入する。敵の八割以上が隘路に入った時、俺は号令をかける。
「グロリア兵、突撃せよ!」
「「「おおおお!」」」
号令と共に、兵士が雄たけびを上げ、隘路の両方から敵に襲い掛かる。
「俺達は商人だ、何かの間違――」
言い訳を並べる敵の首が宙を舞う。
「敵は裏組織の者だ、遠慮はいらん!」
シャロンの檄が戦場に響く。
「なんでばれてるんだ? 畜生が、殺せええ!」
敵も腹をくくったのか、剣を抜く。
隘路で挟まれた敵はパニックになっていたものの、崩れることはなく応戦する。ただのチンピラではやはりないらしい。
そして俺の目は一人の敵を捕らえていた。
その男は真っ赤な司祭服を羽織っていた。
奴がこの敵の頭だ。
俺は矢を引き絞る。弓が軋む音と共に、矢に魔力が集まる。
「付与矢・【迅雷】」
矢を放った瞬間、まさに迅雷の如き速さで司祭服の男の頭を貫いた。
「ボス!?」
突然射抜かれ、倒れた男を見て部下が叫ぶ。
トップを失った敵勢は突然精彩を欠き始めた。
「指揮官は全員射抜く。後は、余裕だろう」
俺は矢筒から矢を取り出し、放つ。それを五回繰り返した後、戦場には五人の指揮官の死体が転がっていた。
「グロリア領を舐めるな、ってね。だけど、これからが本番だ。主戦力が入ってくるのは今の戦力じゃ防げないだろう」
俺は完全に勝敗の決した戦場を見て呟いた。
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