経済封鎖
俺は再び四日かけてグロリア領にたどり着いた。
屋敷内が思ったより騒がしい。
俺が戻ったことを知ると、グスタフが太ましい体を揺らしながら走って来た。
「大変です、経済、経済封鎖されました!」
バーナビーの次なる嫌がらせか……。
俺はため息を吐く。暗殺者ばかりに気を付けていたから、そんな正攻法の嫌がらせをしてくるとは思わなかったよ。
「状況は?」
「我がグロリア領は東西南北と四つの領に囲まれています。東のパンクハット領はいままでと変わりありません。ですが、西のオズワルド領、北のドグラ領、南のカルハザク領から全く商人が来ておりません。このままではうちの経営は成り立ちません!」
グスタフはよほど焦っているのか、顔が汗でびっしょりだ。
『バーナビーがこの経済封鎖を行っている?』
『イエス』
まあそうだろうなあ。
『オズワルド男爵、ドグラ男爵は、バーナビー勢力?』
『イエス』
『カルハザク男爵はバーナビー勢力?』
『ノー』
『経済封鎖を解くには、まずカルハザク男爵から説得すべき?』
『イエス』
だろうな。
まずはパンクハット領からの流通だけで、どれだけ持つか試算しないとな。
『パンクハット領からの流通だけで三か月持つ?』
『イエス』
『パンクハット領からの流通だけで半年持つ?』
『ノー』
『パンクハット領からの流通だけで四か月持つ?』
『イエス』
四か月は持つ、か。長いとみるか、短いとみるか。
「詳細を聞かせてくれないか?」
「西のオズワルド領、北のドグラ領は完全に商人がこちらに向かうことを禁止しています。表向きの理由は、野盗と魔物の増加により閉鎖と聞いています。南のカルハザク領も禁止してはいますが、あちらも困っているというのが本音でしょうね。彫金で必要な宝石はクロノスで主に買ってますからね」
クロノスは宝石の原石がここらで一番多く集まる場所だ。
うーむ、これなら説得できそうなもんだが……。
『ただ、説得しにいくだけで、経済封鎖を解いてもらえる?』
『ノー』
そりゃそうか。
どれくらいバーナビーにカルハザク領が脅されているかにもよるな。
『絶対に経済封鎖を解くな、と脅されている?』
『ノー』
『バーナビーからのお願い程度?』
『イエス』
やはりそこまで強くは言ってないようだな。優しいバーナビー公爵のまま、頼んだらしい。
何かもう一つ、経済封鎖を解くような理由が必要だな。
彫金都市といえば、やはり宝石と、それを装飾する金と銀だろう。
確か……金と言えば、パンクハット領じゃない⁉
俺が見つけた金だろ、それ。
『カルハザクはパンクハット領から金を買っている?』
『イエス』
これですねえ。
『パンクハット領の金も止めれば、経済封鎖を解いてもらえる?』
『イエス』
いいね。とりあえず二方向からの経済封鎖を止めれば、延命できるはず。
俺は早速、リズリーさんに手紙を送った。
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