ノースガルド領
「あの人が、シビル様に告白した子よ」
「綺麗ー! シャロン様も綺麗だし、この間来た商人の子も可愛かったよね。もしかして、うちの新領主って面食いなんじゃ?」
こちらを見ながら、侍女達がこそこそと話している。
俺が侍女達に目をやると、そそくさと逃げ出した。
俺が思った通り、既に皆に告白騒動は広まっていたようだ。
グスタフは白い目線をこちらに向けている。
「プライベートは自由ですが、働いてください」
分かってるよ。
俺はイヴを客室に案内した後、執務室に戻った。
ノースガルド領に行く時間を捻出するため、俺はひたすら手を動かす。
「おい、今日の報告書だ」
声を聞き、顔を上げると、そこにはシャロンが報告書を持って立っていた。
「ありがとう、シャロン」
俺は受け取ると、再び書類に目線を戻す。だが、シャロンは一向に動こうとしない。
「どうした?」
「さっき、面白い話を聞いた。あの女が来て、告白されたそうじゃないか。どうするんだ?」
シャロンは、淡々とした顔で尋ねる。
侍女、広めすぎだろ。まあ領主の恋愛事情はいいネタか。
「はあ、あれは誤解だったんだよ。恋人の振りをしてほしいんだってさ。見合いを断るためにな」
それを聞いたシャロンは、軽く噴き出す。
「なんだそれは! 期待したんじゃないか? ん? 人生はそういうもんだ。恋愛にうつつを抜かすよりまずは領を安定させることを考えるんだな」
シャロンは俺の背中をバンバンたたいた後に晴れやかに帰っていった。
「なんだ、あいつ。嘘ついてやればよかったぜ」
俺は再び書類に目を向ける。
「ひと悶着ありそうだなあ」
俺はメーティスにノースガルド家の二人について尋ねる。
面倒そうだなぁ。準備なしには行けそうになる。
三日かけ、すべての書類のチェックを終わらせた俺は、イヴと少数の護衛を連れノースガルド領に向かう。
イヴは向かっている際も、顔がどこかすぐれなかった。
「やっぱり戻るのも辛い?」
「いつかは戻りたかったはずなんだけどね。お母さんとも仲良くしたかった、からこういう機会でも喜ばないとね。きっとお母さんも、お父さんも見合い相手のこと知らないだけだと思うの。だって、あんな……」
イヴの言葉はだんだん小さくなっていく。
その後、少し調べたが見合い相手バズバーン伯爵は相当悪名高いことで有名な男らしく、まったく相手が見つからない状況らしい。
そんなことを、伯爵家が知らないなんてことはないと思うが……それを言う気にはなれなかった。
「まだ、そこまで成果は残せてはないけど、いつかは認めてほしいなあ。きっとバズバーン伯爵のこと説明したら、分かってもらえると思う。シビルに迷惑はかけないようにするから」
「迷惑なんて、いくらでもかけていいから」
グロリア領を出発して四日。ついにノースガルド領に到着した。
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