あのね
翌日、オズワルドは晴れやかな顔で馬車に乗った。
「シビル男爵。この三日間、ありがとう。まさか俺が一度もケチをつけることができないとはな。それほどの歓待だった。そして、メリーのことも。とても感謝している」
そう言って、オズワルドは俺に何かを投げる。
受け取ったものは、大きなサファイヤのついた首飾りだ。明らかに高いものであることが分かる。
「こんな高そうな物を……」
「礼だ。これで貸し借りはなし。だが、グロリア家か……覚えておこう。また来る」
オズワルドはそう言って、馬車に乗って去っていった。
二度と来なくていいぞ。
どれだけ金がかかったと思ってるんだ。
もらったサファイヤは財政難のこっちには助かるけど。
クレーマーとの戦いは、こちらの勝利で幕を落ろした。
オズワルドはそのままバーナビーの元へ向かった。
「オズワルド男爵。どうなった? 宣戦布告はできたのか?」
バーナビーが尋ねる。
「いやー、素晴らしい歓待でした。非の打ち所がないとはまさにこのこと。あれほどの歓待はどこの貴族の屋敷でも受けたことがありません」
と笑顔で語る。
「何しに行っていたのですか、あなたは……!」
笑顔の崩さない、バーナビーから怒気を感じる。
「す、すみません!」
オズワルドは思わず平謝りだ。
「仕方がないですね。確か貴方の領はグロリア領の東でしたね?」
「はい、そうですが……」
「貴方にも手伝ってもらいますよ。次は経済的に奴を追い詰めます」
バーナビーの目が鋭くなる。失敗したオズワルドは、ただ首を縦に振ることしかできなかった。
シビル達は厄介者が消えた後、再び活動を再開した。
「ようやく、クレーマーが去ったな。しばらく訪問者はもういいよ。疲れた」
俺はそうぼやきながら仕事を再開する。
書類を見ている限り、グスタフ達も、シャロン達も頑張ってくれているようだ。
今回新規に雇った者は皆、メーティスが雇った方がいいと言った者達だ。必ず成長し、我が領を盛り立ててくれるだろう。
「主、訪問者だが……今日はお引き取り願うカ?」
護衛のリーシェンが尋ねてきた。
面倒くさいな。
「うーん、後日来てもらおう」
「承知シタ」
「ちなみに名前は?」
「イヴというらしい」
「ちょっと待って! 会う! 会うからストップ!」
大声をあげて、リーシェンを止める俺。危ねえ……。
それにしても、イヴが来るなんて珍しいな。休暇でも取ったのだろうか?
玄関に急いで向かうと、そこには前と変わらない優しい笑みを浮かべるイヴの姿があった。
綺麗な金髪を軽くかき上げる仕草一つですら、気品が漂っていた。
「シビル、久しぶりね。手紙ありがとう。急に来ちゃってごめんね。忙しかったでしょう?」
「全然。来てくれて嬉しいよ」
「叙勲もおめでとう! あっという間に抜かれちゃって驚いたよ。けど、やっぱり私は見る目あったんじゃないかなー」
と自分のことのように喜んでくれるイヴ。
「ああ。君のおかげで軍に入り、みんなを守れるよ」
「ふふ、無理しないでね。で、今日はお願いがあって来たの」
とイヴがもじもじしながら言う。
一体、なんの願いなんだ? だが、こんな可愛い仕草からのお願いを断れる者はいるのだろうか。いや、いない。
「聞かせて?」
イヴは手をいじいじさせながら、顔を少し赤らめる。そして、決心した顔に変わると、口を開く。
「あのね……私と付き合ってほしいの!」
え?
「え?」
え?
突然の、イヴからの告白だった。
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