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心強いな(白目)

 六時半ごろ、俺達は関所に到達する。

 しばし待っていると、向こうから髭を生やした偉そうな男が大勢の部下を連れこちらにやって来た。おそらく奴がオズワルドだろう。

 オズワルドはこちらを見ると、驚きを隠せないようだった。


「な……なぜ?」


 こんな時間から、ここにいるんだ、と言いたそうな顔である。


「いえいえ、偉大なる先輩であるオズワルド様の顔を見たくて、逸る気持ちを抑えきれませんでした。本日はグロリア領を訪問していただけるということで。なにもないところですが、どうかよろしくお願いいたします」


 俺はそう言って、深々と頭を下げる。だから早く帰れよお前。


「そ、そうか……いい心がけだ」


 オズワルドは苦虫を嚙み潰したような顔で、なんとかそう口にした。


「早速向かいましょう」


「だが、俺は長旅で大変喉が渇いておる」


 オズワルドが再び言いがかりをつけるべく、目を光らせる。


「はい。既にご用意しております。どうぞ」


 連れてきた侍女が、飲み物を差し出す。


「俺は、トローニャの果汁しか飲まんぞ! ん?」


「はい。トローニャの果汁の生絞りでございます。つい先ほど絞ったばかりの極上の品ですよ」


 俺はにっこりと答える。トローニャとは、帝国北部でのみ採れる柑橘系の果実である。真っ赤な皮に包まれており、その皮をむくと、瑞々しい果肉が現れる。


「む……確かにこれはトローニャジュースだな。うむ、美味い」


「良かったです。多くの荷物もすべてこちらでお運びいたしますよ」


 オズワルドは三十人分はあろう大量の荷物を持ってきていた。普通の荷馬車で向かったら、荷物が乗り切らず、そこでもクレームをつけようとしていたらしい。よくそこまで考えられるものだ。

 俺は大きな荷馬車にすべての荷物を積み込むと、屋敷に向かった。




(いったいこいつは何者だ……⁉)


 オズワルド男爵はシビルのあまりの手際の良さに、謎の恐怖を覚えていた。


(そもそも昼って言っておったのに、なぜ七時時前にはおるんだ。しかも関所に! 明らかにおかしいだろう……。そのうえ、トローニャジュースまで用意しているとは。どこで調べたんだ。荷物もあれだけ持ってきたのに、難なくすべて積みおって。プランAはすべて失敗だ)


 オズワルドは前方で馬を歩かせているシビルの背中を見つめる。


(こ奴、やはり大物なのか? いや、そんなことはない。もうすぐ、俺の雇った野党共が奴らを襲う予定だ。たとえ、一瞬で成敗したとしても、危険だったと言いがかりをつけてやるわ)


 とオズワルドはほくそ笑む。

 だが、一向に野盗共は姿を現さない。

 オズワルドは首を傾げる。

 はて、どういうことだと。

 オズワルドはきょろきょろと周囲を見渡す。

 それを見たシビルがにっこりと笑いながら言う。


「ご心配なさらず。ここの街道はオズワルド様が来られるため、あらかじめ野盗共は一掃しておきました。魔物一匹現れないことを保証いたしますよ」


「そ、それは……心強いな……うむ」


 オズワルドは引きつった笑みを浮かべる。


(なっ……なんだとー! 三十人以上雇ったのに、いつの間にやられたんだ! プランBも失敗だ……)


 オズワルドは馬車に揺られながら、今後の言いがかりについて考えていた。

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