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結構なお手前で

 大男は四十台ほどでスーツを纏っていたが、丸太のような太い腕でパツパツになっている。髪型は角刈り。全身が毛深く、手も足も毛で覆われている。

 大きな鼻に、四角い顔。ゴリラっぽい、というかほぼゴリラである。人間とゴリラのハーフと言われても信じられるくらい。


「最近スラムの奴等のせいで、苦情が多くてね。ファミリーをすべて消し去ろうと思ってね」


「てめえ、俺達を舐めすぎだ。部下の兵士がいるからってイキるんじゃねえよ。余裕こいてるが、これを見ても、まだその余裕を貫けるかな!」


 ゴランの叫びとともに、部下の男が布をとる。

 そこには檻に入った黒剛猿の姿があった。


 「驚いて、声も出ねえか! そうさ! これは俺が大枚はたいて買ったB級魔物、 黒剛猿よ! この拳は鉄をも砕き、その握力は全てを握りつぶす! 俺の手下になるってんなら、生かしてやらなくもねえぜ?」


 ゴランは完全に勝ち誇った顔で言う。だが、俺は全く違うことを考えていた。

 うーん、そっくりだ……。


「弟か? 兄弟を檻に入れるのは良くないぞ?」


「誰が、兄弟だボケナス! 調子に乗りやがって、殺せ!」


 俺の言葉に激怒したゴランが黒剛猿を檻から放つ。

 黒剛猿は俺めがけて襲い掛かってくる。

 俺はため息を吐くと、矢を引き絞る。放たれた矢は黒剛猿の眉間にきれいな風穴を空けた。

 血が舞うと同時に、黒剛猿は倒れこみ、ぴくりとも動かない。


「えっ?」


「し、死んでる……」


 二人は今目の前で起こったことが信じられないのか、静かにこちらを見る。その後、無言で顔を見合わせる。


「「け、結構なお手前で……」」


 二人は一瞬で媚びを売るような顔に変わると、にっこりと笑う。


「あ、あの、ちょっとだけ待ってもらっていいですか? ほんのちょっとでいいんです」


 ゴラン、いやゴリはわずかに怯えた顔で、少しだけというジェスチャーとする。


「別にいいぞ」


「へへ、ありがとうございやす」


 ゴリは両手をすり合わせながら、横の部下を呼ぶ。


「おい、どういうことだ! 話と全然違うじゃねえか。領主は軍師で腕はからっきしって聞いてたぞ」


 ゴリが部下を怒鳴りつけている。


「俺も、なんであんな強いのかさっぱりです」


「おい、どうすんだ。このままじゃやべえぞ」


「周りの部下全員呼びますか?」


「既にみんなのされているぞ、呼んでみろ」


 俺の言葉を聞き、ゴリが驚いた顔をする。


「え? じゃあ、ちょっとだけ呼んでいいっすか? すんません。おい、お前ら! 出てこい! こいつを八つ裂きにしろ!」


 ゴリの叫びもむなしく、誰一人部下は応えることはことはなかった。


「あっ、本当っすね。疑ってすんません」


 ゴリは頭を触りながら、頭を下げる。

 素晴らしい変わり身である。こいつを八つ裂きにしろ、といったこいつに一瞬で頭を下げるとは。

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