ゴランファミリー
俺は敵の暗殺者を下の階から射抜いた後、すぐに二階に向かった。
「やっぱ自殺したか」
俺は死んでいる男の姿を見る。
「みんな、歯に毒を仕込んでいるな。熱心なことだ。それにしても、今回の敵は中々強かった」
「敵さんのエースっぽいし、当分暗殺からは逃れられそうだ」
「もう暗殺者狩りは勘弁願いたいものだ。正々堂々戦いたい」
シャロンはため息を吐く。
「世話をかけたな、シャロン」
「別に構わん。それよりスラムをどうにかしてくれ。毎日の陳情で頭が痛くなりそうだ。裏組織であるファミリーが牛耳っているらしいが、最近特に荒れているみたいでな」
どこも裏組織ばっかじゃねーか。お前ら、全然裏になりきれてねえぞ。
「あまり奴らをのさばらせ続ける訳にはいかないからなあ。明日、スラムに向かうか。リーシェンも連れて行こう」
「あの護衛か。承知した。私もついていこう」
こうして、スラム行きが決定した。
 
「リーシェン、ファミリーの掃討を行う」
翌日、俺はリーシェンに伝える。
「暗殺者関係が終わったから動くのですネ。ある程度の情報はもうまとめてあります。どうぞ」
リーシェンからもらった書類には、いくつものファミリーが示されていた。
いくつものファミリーはあるが、その中でいま最も幅を利かせているのはゴランファミリーというらしい。人数も百人近くいるということで、なかなかの規模である。
「ここさえ潰せば、おとなしくなると思いますよ」
最近領地をよく荒らしているのは、ゴランファミリーらしい。
「相手は分かった。簡単に手筈を説明しておく。頼んだぞ」
俺はリーシェンに簡単に説明する。その後、俺たちはスラムへ向かった。
 
メンバーは俺と、シャロン、リーシェン。そして兵士が三十人。
大勢で行って逃げられても面倒だからこその、少数である。
狭い路地裏にはゴミが散乱しており、そこら中から異臭が放たれている。子供達はごみをあさり、老人達は地面に座りながら金を通行人からせびっていた。
「おい、兄ちゃん、金持ってそうだなあ。恵んでくれよ~」
そんな老人も背後の兵士を見て、目を背ける。
スラム中の視線が自分に集まっているんじゃないか、というくらい視線を感じる。よそ者が珍しいからだろう。
今も子供が俺たちの姿を見て、どこかに去っていった。誰かに伝えるためだろう。監視体制もできているところを見ると、組織としてはしっかりしているのかもしれない。
何人か、明らかに堅気ではない奴らがこちらを監視している。
『奴等がゴランファミリー?』
『イエス』
あいつらか。
「ねえ、君」
「なんだ、てめえ! てめえらみたいな野郎が来るとこじゃねえぞ? 殺されたくなきゃとっとと失せろ」
俺に声をかけられた男が、怒りの形相で凄む。既に手には剣が握られている。
「俺は新しい領主、シビルだ。お前のボス、ゴランに用があって来た。会わせろ」
「失せろ、って言ったよな?」
男が剣をふるう。その一撃はシャロンに防がれた。
「死にたいか?」
シャロンが冷たい目で睨む。
「おい、こっちだ。着いてこい」
もう一人の男が、路地の先を指さす。
「いいのかよ、こんな奴等会わせて」
剣をふるった男が、尋ねる。
「仕方ねえだろう」
男はそう言って、俺たちを案内し始めた。
いくつもの狭い路地を進んだ先に、大きな倉庫があった。倉庫の扉には二人の大男が立っている。
「お前が新領主のシビルか。悪いが、ここは一人しか通せねえぞ」
大男達が告げる。
「なに? ふざけるなよ」
シャロンがいら立ったように言う。
「なら、帰るんだな。別に俺達は構わねえぜ」
「別にいい。俺が行こう」
「おい、シビル」
「大丈夫だ、安心しろ」
「余裕ですねえ、領主さん。ボスがお待ちです」
俺は一人だけ、扉の中に入っていった。
倉庫の中は暗かった。薄暗い中、立派なソファに座った大男の姿あった。体長は二メートル近い。
その後ろには、倉庫だからか、布をかぶせてある物が多い。スラムだからか、謎の臭いがする。
その横には若い男が立っていた。
「お前が新領主か。何をしに来た? 事の次第によっちゃ、無事は保証できねえぜ」
大男は、俺を見据えて、そういった。
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