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馬鹿女

 帝都のスラムの一角に古びた建物が一軒存在していた。表向きは雑貨店と偽っているが、内情はバーナビー配下の暗殺者組織である。

 バーナビー配下の暗殺者組織の長は頭を抱えていた。

 稼ぎ頭だった毒使いボリスと、カラゾフ三兄弟が暗殺に行き帰ってきて来ないからだ。


「あの二組も失敗するなんて……今まで何百人と殺していたうちのエースだというのに。ボスにはとてもじゃないが、報告できんな」


 長は、最初は半信半疑で聞いていたシビルのスキルが未来予知というのを半分信じ始めていた。

 だが、暗殺は敵を不意に襲撃するものだ。読まれているならば、殺すことは非常に困難になる。それでは暗殺者よりも兵士のほうがずっと向いている。


「よお。ボリスにカラゾフも殺られたらしいじゃねえか」


 長に声をかける男がいた。一見普通の男であった。農民にも、兵士にも見える。


「トーチカか。厄介な依頼だよ本当に」


「次は俺だろ?」


 男はこの組織のトップを担っていた。


「ああ。だが気をつけろ。奴は未来が読めるらしい」


「眉唾だろう、と言いたいが……覚えておこう。あいつらがやられたんだ。ただの馬鹿貴族じゃねえんだろう?」


「頼んだぞ、トーチカ」


「こちらが狙っていることがばれているなんて……割に合わねえ仕事だぜ」


 トーチカはそう言って笑うと、建物を出て行った。




 俺は執務室で次の暗殺者の情報をメーティスに確認しながら、頭を掻く。


「これは……なかなか面倒そうだなあ」


「また陳情か?」


 シャロンが眉を顰める。陳情のたびに治安維持に駆り出されているシャロンは、陳情がトラウマになりつつある。


「いや、次の暗殺者なんだけど、前回より厄介そうでな。おそらく今までみたいに、不意打ちで一撃、とはいかない」


「なるほど。純粋な戦いになる可能性が高い訳か」


「しかも純粋な戦闘力もかなり高い。おそらくA級以上はあるな。暗殺のみなら覚醒者もたおせそうだ」


「流石影のドンといったところか。人材が豊富だな」


 シャロンは剣を見ながら、呟いた。




 それから一週間が経過した。シビルの屋敷は相変わらず夜になっても文官達が慌ただしく動き回っている。

 エンリケが屋敷内の兵士を見ながらため息をつく。


「こんなに兵士まみれじゃ落着きもしませんよ。早く数を減らしてもらいたいものです」


 エンリケが兵士に絡みながら悪態をつく。


「相変わらずだな、お前は。こちらも領主を守っているんだ。少しぐらい我慢しろ」


 見回りをしていたシャロンが、エンリケを見て顔を歪める。


「おお、頭の悪そうな女騎士さんではないか! こいつらをどこかにやってくれませんかねえ」


「お前がどこかへ行け、馬鹿。お前こそ二階で何をしている」


「新しい施策を思いついたので、シビルさんに見てもらおうかと」


 眼鏡をクイっとさせながらどや顔で言う。


「明日にしろ。シビルも疲れてるんだ」


「仕方ありませんねえ。明日にしますよ」


 エンリケが帰ろうと、後ろを向く。次の瞬間、シャロンが剣を抜き、エンリケの首を狙う。

 エンリケは尻餅をつき、怯えたような顔でシャロンを見る。


「なっ! 何をするんだこの馬鹿女!」


 エンリケが大声を上げる。さっきまで絡まれていた兵士も驚きながら、シャロンを止めようと動く。


「隊長、こいつは確かにうざいですがやりすぎです!」


 だが、シャロンの目は冷静だった。静かに手で兵士を制する。

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