叙勲祝い
カルロ襲撃以降、俺は再び仕事塗れの一日を過ごしていた。
毎日陳情ばかりだ。領主が居なかったせいか治安が悪化しているようだ。
「これも陳情だ……。荒れすぎだろ。新人を連れて、シャロンに治安維持に向かわせて」
「分かりました」
俺は書類の山の仕事を片付けながら、指示を出す。
内政はあの馬鹿もといエンリケが頑張っているようだ。人を煽るが言っていること自体は正しいので、良くなってきてはいる。
「少しはエンリケも馴染んだか?」
それを聞いた文官筆頭としてうちを回しているグスタフの顔が歪む。
「仕事はできますが、態度が悪すぎます! 私ではとても……何とかしてください」
「一下っ端まで領主が指示していては仕方ないだろう。グスタフもここのトップなんだ、頑張ってくれ」
「このままでは過労死の方が先です」
「人は常時募集しているんだが……来ないんだよなあ」
正確には来てるんだけど、雇うに値しない者ばかりなのだ。仕事と言うものは人が増えれば必ずしも楽になる訳ではない。足手纏いが増えると、なぜか仕事がむしろ増えたりする。不思議だ。
「シビル様、パンクハット子爵がお見えになられています。どうされますか?」
護衛のリーシェンが尋ねてきた。
「会おう。後は頼んだ、グスタフ!」
俺は勢い良く立ち上がると、手を振る。
「終わったら戻ってきてくださいね。領主の許可がないと進まない案件も多いので」
完全にガンギマリの目だ。断ったら、辞めそうな勢いがある。
「は、はい……」
俺は残業代とは別にボーナスも配った方がいいな。と思いながら応接間に向かった。
応接間にはにっこりとした顔で座っているリズリーさんが居た。
「しばらくぶりです。随分とご機嫌ですね」
「はは、そう見えるか。ご機嫌にもなるさ。自分の元部下が、嫌いな奴に一発決めたんだからな」
そう言ってリズリーさんは笑った。
「情報が早いですね……」
おそらくバーナビーの屋敷近くに密偵を送っていたな。逃げる俺を見て、判断したのだろう。
「安心しろ。皆が知ってる訳じゃない。詳細は知らんが、何かしたのだろう?」
「はい。思いっきりコーヒーをぶっかけてやりましたよ」
それを聞いたリズリーさんは一瞬驚いた顔をした後、大きく笑う。
「やるじゃないか! なるほど。それは逃げるな。俺もその場に居たかったよ」
「危険ですからお薦めはしませんが……」
「そうだ。今日はお前に叙勲祝いを持ってきたんだ。これだ」
にやにやしながら、巻かれた羊皮紙を手渡してくる。現金がいいんだけどなあ、と思いながら受け取る。
だが、その中身は想像以上の品だった。
「本当ですか⁉」
俺は驚きの顔で、リズリーさんを見る。
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