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やるべきこと

「俺にどうしろ、って言うんだよ! 父さんはバーナビーに殺されたことくらい知ってるさ! だが、あいつを殺すことなんてできる訳ねえだろうが。ローデルを裏で牛耳ってる男だ。近づくことすらできずに殺される」


「なら、諦めるのか? だが、それも一つの生き方だとは思うがな。エンデが死んでも守ろうとしたのは、お前の命だからな。大事にするといい」


「父さん……。今思えば、迷惑ばかりかけていたよ。お前にとっては、ただの敵でしかないと思うがよ。俺にとっては優しい父だった。わがままもいつも聞いてくれた。だが、そのわがままのせいで……」


 カルロは静かに倒れ込む。既に剣も手放している。戦意は喪失しているようだ。カルロはしばらく泣いた後、腫れぼった目に溜った涙をその手で拭う。


 その目からは、濁りは消えていた。


「これからどうするつもりだ?」


「なんでお前にそんなこと教えなきゃいけねえんだ。俺はまだ恨んでるからな。だが、まずやることがある。お前が言う通りな。だから、そっちを先にする。安心しろ、もうお前を狙ったりしねえよ」


 カルロは立ち上がりながら言った。


「そうか……」


「あばよ」


「持っていけ。これから入用だろう」


 俺は金の入った小さな革袋を投げる。カルロは少しだけ、革袋を見つめた後俺に投げ返して来た。


「今は貴族でなくなったが……誇りまで失ったつもりは無い。自分が殺そうとした男から、施しなど受けん」


 カルロはそう言って、去っていった。


「エンデが死んだことで、成長したか。復讐ってのは、死んでも成し遂げるべきものか、忘れて幸せになるべきなのか。どうなんだろうなあ」


 俺はそう呟いた。




 カルロは隠し通路から、外に出た。出口のすぐ近くには、元エンデの武を担う男ドットが立っていた。


「ドット、久しぶりだな。お前がなぜここに居る」


「エンデ様から聞かされていました。若がシビルを狙うようなら止めるようにと。その時にこの通路についても」


 それを聞いたカルロは頭を掻く。


「そこまで読まれていたのか。嫌になるな。だが、ならなぜ止めなかった? 予め止めることもできただろうに」


「復讐を止める権利など、なぜありましょうか。例え、それは筋違いだとしても」


 カルロの顔が歪む。


「そう思うなら、止めろよ……」


「男は直接動かねば分からんものです。特に、目が濁った時は。そのせいで死んだとしても。だが、目の濁りが取れましたな。その理由が敵というのも悲しい話ですが」


 ドットはそう言って、笑う。豪快な笑いだった。今まではその風貌で少し苦手だったな、とカルロは昔を思い出した。


「俺はこれから旅に出ようと思う。一人でな。見てみたいんだ……世界を。今なら今までと違う目線で見れると思う。そして最後は……」


 カルロは剣を見つめる。


「それは良い。男の修行に一人旅は基本ですからね。ご武運を」


「ああ。俺が言うのもなんだが……行くところがないのなら、シビルの軍にでも入ればいい。俺より、よほど器の大きい男だ」


「若がそこまで仰るとは。本当に成長なさいましたな。正直、ぼんくらで俺は心配でしたよ」


「いいすぎだぞ、お前……」


「ハハハ。男は剣一つあれば生きていけるものです」


 呆れているカルロの頭を乱暴に撫でるドット。

 カルロが旅立っていくのを、静かに見守っていた。


「若は自分の道を決めなさった。俺はどうすべきか……」


 静かにドットは呟いた。

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