何が効く?
「これからどうすればいいかな?」
落ち着いたイヴが俺に尋ねる。
「そうだな……。やっぱり俺達がグランクロコダイルを倒すしかないんじゃないか? デルクールにB級を倒せるような人っている?」
「居ないわ。B級以上を倒せる人って、途端に減るの。C級冒険者ですら、この町には一組しか居ないんだから」
「やっぱりそうなのか。実力で倒すのは不可能だし、何か策を練るしかない。とりあえず、弱点について聞いてみる」
「あ、スキルに聞くのね」
『グランクロコダイルに弱点はある?』
『イエス』
弱点自体はあるのか。助かった。
『弱点は物?』
『ノー』
『弱点は魔法?』
『ノー』
『弱点は武器?』
『ノー』
うーん。良く分からん。一体なんだ?
『弱点は部位?』
『イエス』
場所か。どこだろう。
『頭?』
『ノー』
『尻尾?』
『ノー』
違うのか。確か全身が鋼のような鱗で覆われてるんだっけ。じゃあ、内側?
『口内?』
『イエス』
正解か。グランクロコダイルが噛みついてこようと口を開いた瞬間を狙う。鋼のような鱗を破壊できるほどの魔法や攻撃はできないから、まあ妥当か。
「イヴ、弱点は口内らしい」
「硬い鱗を避けて、ってことね。分かりやすい」
「俺はこれから何かグランクロコダイルに効くような魔法や、道具について商人ギルドに聞いて回ろうと思う。イヴは冒険者ギルドに行って、情報を集めてくれないか?」
「分かったわ」
イヴと別れて、商人ギルドに向かった。
商人ギルドに入ると、何人かが声をかけてくる。
「博士一人とは珍しいな」
声をかけてきたのは、若い男の商人だ。最近は新進気鋭の商人として、俺の商会の評判は中々高い。最近俺は商人ギルド内では博士と呼ばれている。そのためどこか敬意をもって接せられていた。
「たまにはな。分かったらでいいんだが……B級魔物にも効くような魔法を出せる魔道具や、武器に心当たりはないか?」
それを聞いた男が笑う。
「なんだ博士。冒険者に転職するのか? B級魔物に効くような攻撃を出せるのは魔道具ぐらいだろうな。デルクールには売ってないんじゃないか?」
やっぱりそうか。そんな兵器がここらに置いてある訳がない。では毒を使うか? だが、弱い毒じゃきくまでにどれくらい被害があるか分からない。
口内に大きな一撃を与えられる何かを探すしかないだろう。だが、そんな物が平和なデルクールにあるとは思えない……。やはり無理なのか?
「なんだ、結構真面目に悩んでいるな。何かあったのか?」
話を聞いていた横の男も尋ねてくる。こちらは少しベテランで三十代後半の商人だ。
「俺のスキルは危機察知系のスキルなんだが、二日後グランクロコダイルがこの町に攻めてくることが分かった。だからなんとかして仕留める方法を考えてるんだ」
それを聞いた商人たちは、皆驚いた顔をした。だが、馬鹿にするような顔をしていないのは、やはり博士という前情報のおかげだろう。
「それは……まじか。だが、そんな突拍子もない噓を吐く理由もない……よな」
「ああ。嬢ちゃんが居ないのは、それが理由か?」
「もう隣町に避難してもらった」
「なんでお前も逃げないんだよ。別に俺達は商人だ。逃げたって誰も責めないだろう?」
若い商人が言う。
「俺も逃げたかったさ。だが、逃げられない事情があるのさ」
「人間色々あるわな……。大した情報じゃないかも知れねえが、たしか町のはずれに住んでいる錬金術師ゼガルがまるで炎魔法みたいに、爆破する道具を作っていると聞いたことがある。だが、偏屈で誰が行っても会ってすら貰えないらしい。金になりそうだ、と何人かの商人がそいつの元に向かったが、結局会えず仕舞いだ」
それを聞いたベテランの商人が言う。
「俺も聞いたことがあるな。変わり者らしいな」
若い男も聞いたことはあるようだ。
『その道具はグランクロコダイルに通用する?』
『イエス』
これだ! これなら通じる。俺の中に、小さな希望が宿る。
「そんな人がこの町に。是非行ってみたい! 場所を教えてくれ!」
「教えるのはいいが……本当偏屈らしいぞ。気を付けろよ」
ベテランの商人から場所を聞く。
「俺もダブロンに避難しようかね。どうせ用事もあるし」
「俺もだ。博士の言うことを笑い飛ばすのは簡単だが……商人はそういう情報こそ大事にするもんだ」
話を聞いていた何人もの商人は、半信半疑ながらもこの町を一時的に去ることを決めたようだ。
俺は二人に礼を言うと、商人ギルドを出た。
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