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手が滑ったぜ

「やはり、知っているのか。知っている割には堂々としているな、君は。だが、そう言う男でないと、意味がない」


 バーナビーは笑顔を消すと、再度口を開く。


「単刀直入に言おう、私の部下になれ。君の才、奴の下で腐られるには惜しい代物だ」


 裏社会のドンからの、スカウトだった。


「リズリー様の元を去れ、と言っているのですか?」


「貴族界において、派閥が変わるというのは良くある話だ。さして気にするようなことでもない。君のスキルについては、聞いている。素晴らしいスキルだ。そのスキルがあれば、公爵にも、帝国最強の貴族になることも可能だ。私の下に就けば、だが。君に相応しい地位も用意しよう」


 確かに話だけきけば、魅力的ではある。最も力のある貴族の一人だろう。出世のみを求めるならば、乗るべき話だ。

 だが、どうにも彼を信じることはできない。


「お世話になったリズリー様を、裏切ることなどできません。大変嬉しいお申出ではありますが……」


 とりあえず、リズリーさんをだしに断ろう。


「ふむ……君にはそれくらいの強かさはあると思っていたが。必要なら親も斬り捨てることができるようなね。今も、獣人や亜人を使ってる」


 バーナビーは俺の背後の二人を見て、言った。

 使う?

 俺の心が、騒めいた。駄目だ、熱くなっては……。ここは冷静に……。


「何を……仰っているのですか?」


「人間ではないが、亜人も獣人も非常に優秀だ。戦いの道具としてはね。兵士として、人よりも使い勝手の良い亜人達を使っているところからして、割り切っているのだろう? そこからも、君は割り切った男だと――」


 気付けば俺は持っていたコーヒーを思い切り、バーナビーにぶっかけていた。

 綺麗に仕立てられていた奴のスーツは、黒く染まっている。


「手が滑ったぜ、クソ爺。もう一度、言ってくれるかな?」


「どういうつもりだ、小僧?」


 今度の奴の声は、怒気に満ちていた。


「勘違いしてるようだから、言っておく。メロウも、ライナスも道具じゃねえ。俺の大事な仲間だ」


 バーナビーはハンカチで顔を拭くと、こちらを睨みつける。


「お前がそれほど愚かとは思わなんだわ。私に手を出して、無事に帰れると思うか?」


 バーナビーの後ろの護衛達が剣の柄に手をかける。

 俺はそれを嘲るように笑った。


「逆に聞くぜ。バーナビーさんよ。俺のスキル知ってるんだよな。なら俺はこの状況を全く予想してなかったと思うか?」


「何を……言っている?」


「あんた、随分優秀な護衛が居るらしいが……今、居ない人もいるんじゃないか?」


「小僧が……! 仕留めろ!」


 バーナビーの叫びと共に、敵が剣を抜く。


「メロウ! 右だァ!」


「任せえ!」


 俺の言葉を聞き、メロウが念動力を右の扉に撃ち込む。

 ドアが勢いよく吹き飛んだ。


「逃げるぞ! 着いて来い!」


 俺は空靴を起動させる。瞬時に部屋を飛び出す。


「あばよ」


 俺はそう言葉にすると、廊下を翔ける。

 廊下はどこも護衛だらけのようだ。


「あれは……グロリア男爵⁉」


 突然の状況に、護衛も動きが鈍い。


「シビル、道は分かっているのか?」


 ライナスが尋ねる。


「ああ。こうなる可能性を予想してたからな。完全に頭に入っている」


 俺は入り組んだ屋敷内を走り回る。


「貴様……狼藉者が!」


 兵士の一人が襲い掛かってきた。

 ライナスは一瞬で距離を詰めると、回し蹴りで兵士を蹴り飛ばす。


「人数が多いな……」


「もう出れるぞ! この窓だ!」


 メロウが窓を念動力で吹き飛ばす。

 ガラスが粉々に割れる音が屋敷に響く。


「外に出る。後はすぐだ」


 俺達は外に出ると、塀を乗り越え、屋敷を後にした。

 今日、俺とバーナビーは完全に敵となった。

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