エピローグ
「おおおー! 二段階昇進か!」
「流石に上げすぎでは?」
「噂ではあの人も推薦されたらしい……」
マジか。二段階も上がるとは予想していなかった。軍って、偏見だけどあまり頑張っても評価されないイメージだからな。それにしても男爵なら土地持ちも居るだろうが、土地もらえるんだろうか?
「今まではパンクハット領の世話になっていたかもしれんが、お前はもともと帝国軍だからな。そこまで昇格すれば、帝国騎士団に籍だけでも置かねばなるまい。そして、お主は運がいい。ちょうど、土地が余っておるのだ。そこを今回授けよう」
え? 余ってる土地なんてあるの?
「お主も知っているだろう。前クラントン領をお主に授ける」
クラントン領? なぜ? エンデは一体どこに行ったんだい?
混乱する俺の様子を見て、陛下が楽しそうに笑う。
「突然で混乱しておるな。お前もこれで正式な貴族になったのだ。家名が必要であろう。何を望む?」
家名か……。全く決めてなかったな。そうだな。
「この国に栄光をもたらすことができるように。グロリアの名を頂きたく思います」
「ふむ……シビル・グロリアか。良い名だ。これからはグロリア家として、我が帝国を支えてくることを祈る」
「必ずや」
俺は再び深く頭を下げる。
こうして遂に俺は土地持ちの貴族にまで辿り着いたのだった。
俺はメロウを連れて、シビル隊の元へ向かった。
シビル隊はパンクハット領で第三師団と共に訓練をしているらしい。
そこには熱心に訓練をしているシビル隊の面々の姿があった。
「隊長だ! 隊長が帰ってきたぞ!」
「おおー! 大魔境から本当に帰ってきたんだ!」
「凄げえ! 姉さんを呼べ、姉さんを!」
久しぶりだからは大歓迎である。嬉しい。
シャロンは歩きながらこちらに向かってくる。歩きなのにやたら速い。
「ただいま、シャロン」
「帰ってきたのか。遅かったな」
久しぶりの再会なのに、中々のドライさである。
それを見ていたルイズがにたりと笑う。
「何を格好つけてるんですか、姉さん。隊長が大魔境に行ってからしばらく何も手につかなかったのに。素直に、無事でよかったって言いましょうよ~。急に、毎週祈っていたじゃないですか」
それを聞いたシャロンが鬼のような形相でルイズを睨む。
「訓練を倍に増やされたいらしいな……!」
「えっ!? それは死人出ますよ、本当に!」
ルイズが怯えてこちらを見る。
「隊長、帰ってきてくれて本当嬉しいっす。副隊長の訓練は地獄でした」
「俺は悪くなかった。美人にならきつくされてもいい」
後半は謎の扉を開いている。
シャロンはこちらを見ると、咳ばらいをする。
「強くなったようだな。魔力量が今までとはけた違いだ。大魔境で鍛え上げてきたらしい」
シャロンも強くなったのが分かる。この急な成長は、アンジュさん達に訓練して貰ったのだろう。
「ああ。今なら、もっと多くを守れるよ」
「私が従う隊長だ。そうでなくては」
俺達の話を聞いていた兵士の一人が恐る恐る手を上げる。
「あの~隊長。後ろの女の子は誰ですか?」
メロウのことだろう。メロウは前に出る。
「私、メロウって言います。えーっと、シビルの女です!」
「えっ!? お前何言ってんの?」
そのネタ、既にエスターさんやってっから! 俺は突然のメロウの発言に度肝を抜かれる。
「隊長、大魔境で女の子を連れてくるとは……」
「流石だ……。しかもめっちゃ可愛いぞ」
隊の兵士は皆完全に信じ切っている。
「いい身分だな……シビル! 私に隊を任せておいて、お前は若い女とイチャイチャしていた訳だ」
「いや、誤解――」
シャロンの鋭い世界を獲れる右ストレートが俺のボディーに刺さる。
「ぐえええ!」
「帰る……」
シャロンは去っていった。
メロウは倒れ込む俺を気の毒そうに見ている。
「えらい情熱的な人やな」
「お前、まじで後で誤解解いておけよ。まじで」
「分かってるって。冗談や」
兵士の一人が心配そうにやってくる。
「隊長、大丈夫ですか? けど、副長も本当に心配してたんですよ。」
「分かってるさ。別に怒ってないよ」
「良かったです。元クラントン領を手に入れたようで、おめでとうございます!」
「ああ。それにしてもエンデはどうしたんだ? あいつが素直に渡すとは思えないんだけど?」
俺の言葉を聞いた兵士が、口を開く。
「エンデは亡くなりました。息子のカルロも同様と聞いてます。隊長が居ない間、ローデルも色々あったんですよ」
「ええ!? そうなの!?」
エンデとカルロが死んだ? 俺が居ない間に何があったんだ?
混乱している俺に、他の兵士が追いうちの情報を提示する。
「そういえば副長が預かってましたけど、バーナビー公爵からお茶の誘いの手紙が隊長宛てに届いてましたよ?」
バーナビー? リズリーさんの宿敵じゃねえか! なぜ俺に誘いを?
嫌な予感しかしねえ……。
どうやら貴族になって順風満帆とはいかなそうだった。
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