ごめんね
ここで時は少しだけ遡る。イヴと会う前、俺は馬車を走らせていた。だが、足が、体が、逃げることを拒否するように固まっていた。
「ごめん、ネオン。俺はいけない。稼いだ金の残りは全部持って行っていい。俺はここで……やることがある」
俺は意を決してネオンに切り出した。馬鹿なことを言っているのは分かっていた。
「何言ってんのよ!? あんた自分が弱いこと知ってるでしょ! ここに残ったってなんの役にも立たないわ!」
「それでも……何かやれることはあると思う。それを残りの時間で探そうと思う」
「……あの女が残るから?」
ネオンは眉を吊り上げて睨むように、そして少し悲しそうに尋ねる。
「ああ。彼女が残るのに、俺だけ逃げる訳にはいかない。たとえ役に立たなくても」
「知らない! 勝手にすれば! 損得だけで考えられないシビルは商人になんて向いてないわ! ネオンビル商会はもう解散よ!」
ネオンが叫ぶ。その目には、涙が溜まっている。
「そうかもしれない。ごめんな、ネオン」
俺はただ謝ることしかできなかった。彼女は俺の弱さを知っている。自殺志願にしか見えないのだろう。
ネオンは再び馬車を走らせて行ってしまった。
「大将……。止めはしねえが、無理はすんなよ」
「ありがとう。ネオンをよろしく頼む」
「応よ。金額分はしっかり働かせてもらうぜ」
ディラーはにっこりと笑いながら、ネオンの後を追っていった。中々良い人だった。きっと彼なら無事にネオンをダブロンまで送ってくれるだろう。
正直言うと、怖くてたまらない。俺が勝てる訳がないのだ。現実の俺は勇者ではないただ変わったスキルを持つ男でしかない。
だけど、イヴを見捨てて逃げるという選択肢は取れなかった。命を助けてくれた恩人を見捨てて逃げた先に、幸せなどないのだから。
俺は震えた足を動かして、イヴを探す。
「い、いざという時は、イヴを引っ張って逃げれば……」
根が臆病なのは、簡単に変えられないのだ。
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