終わったよ
「あっちは……大丈夫そうだな」
エスターさんの方に目を向けるが、もう終わりそうだ。めったに見せない本気のエスターさんの一撃が、キンググリズリーの首を斬り落とした。
呆然としているメロウの元へ駆けよる。
「すまない、遅れた。だが、もう終わったよ」
俺の言葉を聞いたメロウは、聞いてはいるようだが、どこか焦点は合っていない。
メロウの前には、目をつむったジルさんの姿があった。
「あのな……。お父さん、私が外に行くの認めてくれてん。一緒に外に行ってくれるって。これからはお父さんも平和な生活送ってもらえるって、思ってた、のに。けど、お父さん、私を守って死んでしまった……。何が悪かったんやろ? 私が外に出たいなんて言ったから……?」
メロウの頬が涙に濡れる。
俺は静かに抱きしめる。
「違う。メロウは何も悪くない。ただ、タイミングが悪かっただけだ。少し休め。今は何も考えなくていい。その後、これからのことについて、ゆっくり考えよう」
「うん……ありがとう、シビル」
「気にしなくていい。俺は残りを片付けてくるよ。ここに居て」
俺は残りのハイランドグリズリーを片付けるべく、周囲を見渡す。
残りは二十体程か。魔力もそんなに無いが、トップを失って混乱して逃げる個体も多い。
いけるか?
「シビル。無事、仕留められたようだな。手負いとはS級を倒したんだ。覚醒者に足を突っ込んだな。大したもんだ」
敵を倒し終えたエスターさんがこちらにやってきた。
「手負いなうえ、策も弄しましたからまだまだですよ」
「素直に喜べばいいのによ。残りは消化試合だ。俺が片付けるか?」
「俺も行きますよ。メロウの付近には一体も居ませんし、安全なのは確認済です」
「便利なこって。じゃあ行くか」
俺達は二手に分かれて残党狩りを開始する。
俺は村の散策中に生き残りの男に出会う。
あれは、確か俺に何度も絡んできた三人組のリーダー格の男じゃねえか。
片腕を失い、全身は恐怖で震えている。今にも発狂しそうな、様相である。
「おい、大丈夫か?」
俺は思わず声をかける。
だが、俺の言葉に体を大きく揺らすと、怯えた顔をこちらに向ける。
「ひ、ひいいいい!」
まるで化物にあったかのように俺を見て脱兎のごとく逃げ出してしまった。
「ひでえ。心配して声かけてやったのに……」
俺は気にすることを止め、一匹一匹残ったハイランドグリズリーを仕留める。結局半分以上は逃げてしまったようで、俺の出番はあまりなかったが。
こうして、メリー族の村を襲った悪夢は多くの犠牲を残して幕を閉じた。
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